[]潜在的なニーズを探す、とはどういうことか?

巷にある家電製品をパーッと見渡してみて、既に話題になっているけれども市場規模的にはもっと伸びる可能性を秘めてるよなあと思う商品に電子ブックがありますね。



これはよく言うのですが、アナログをデジタルに変えるところにはほぼ必ず市場があります。デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、テレビ、レコード、カセット、フォトフレーム、etc



もうほとんどまだ残っているアナログ商品は無くなりつつあるのですが、とにかくアナログ→デジタルは商売になる。





が、これは!と思う商品を作るにはもう一歩踏み込む必要があって、それがいわゆる「潜在的ニーズを発見する」というものです。ですが、これを発見するのは非常に難しい。もちろん、そんな簡単に発見できれば、それこそ優秀な商品が世の中に氾濫することになるわけで、そうでない現状を見ればいかに「潜在的ニーズ」を発見することが難しいかはわかります。





ですが、最近、「潜在的ニーズ」なるものを発見するための思考パターンがあるような気がして来ました。それは何か?



















簡単に言うと、世の中で「これはそういうものだ」と常識化されていて「諦められている」事柄を探すことに集中することが「潜在的ニーズ」なるものの発見に最も近いように思うのです。



たぶん、80年代以降だと思いますが、「世の中のすべてのニーズは企業によって満たされてしまった」という商品的満腹感が世の中を覆いました。経済成長に伴って貪欲にものを買い揃えてきた時代(=これ、今の中国がこの状態ですね)が終わり、例えばボードリヤールが言うような記号化された消費が前面に出てきます。



この話はマーケター的にはかなりややこしくんですね。消費を通じて自分が何者であるのかが識別され、社会クラスター化されていくのですが、ギャッツビー的な「控えめな消費行動を取ることによって新興階級の上流への侵入を防ぐ」とか、複雑怪奇な消費行動が現れるようになり、モノを売ること、もしくは売れるものを作ることが簡単ではなくなりました。



このため、研究者達は、この複雑性をなんとか解読しようと、90年代以降のブランド論の研究に向かっていくわけですが、実はここで一つ見落とされている重要な考え方がありました。





それが、「これはそういうものだ」と常識化されて「諦められている」事柄を探す、という行為です。





例えば、このPCというもの。会社のPCは特にひどいのですが、Windowsは起動に数分かかったりしますね。会社のPCはXPですが、起動するのになぜか5分かかります。ネットワークに繋がって認証を、、とやっているのできっと5分なんでしょうが、年間1500分、60時間も下手をしたらボーっとPCの前で待っていたりするわけです。



みんな遅いなーとは思っているのでしょうが、すべてのPCがそういう状態だし、毎日同じ状況を経験しているので「これはそういうものだ」と常識化されています。





こういうところに根本的なビジネスチャンスがある。





潜在的な不満は顕在化すると圧倒的な流れを作ります。GoogleがChromeOSでやろうとしていることは、きっとこういう潜在的な不満の解決なのでしょう。



最も簡単なニーズの満たし方は「不満を解決する」という方法です。確かに80年代までに、目に見える判りやすい不満はすべて解決されたのでしょうが、実は不満は潜在的な存在として常識の中に眠っています。



記号消費の謎解きからライフスタイル研究、ブランド研究まで、これはこれで重要なのですが、一方で常識の中に存在する潜在的な不満の種を見つけるということは、売れる商品を作るうえで非常に重要です。



人間の脳は常識やステレオタイプをベースに世の中を見るように出来ているので、常識の中の潜在的な不満の種を見つけることは、そう簡単ではないのですが、メタ認知的な意識をここに集中することによって、まだまだ世の中には売れる商品の種がたくさん発見できると思うわけです。





さて、話を最初に戻して、電子ブックですが、これ、僕は個人的に読書という行為に対して「潜在的な不満」だと思っていることがあるんですね。



それは、「本の内容が覚えられない」ということ。



それはお前の頭が悪いからだろう、という話はおいておいて、内容が難しければ難しいほど、なかなか内容を完璧に覚えることは難しいと思うのです。



だから、本は必ず買って、赤線で線引きや書き込みをして後々で見返した時に判りやすいようにしたりするのですが、こういう問題はデジタルになるともっと便利になんとか出来るのではないかと思ったりするのです。



例えば、本に書き込みをするように、サマリーをつけたりタグをつけておくと、それが自動的にデータベース化される、とか。インターフェース的に引用元、関連項目にすっと飛べる、とか。辞典と連動している、とか。新しい本を読んでいると、似たようなキーワードが多い昔の本への書き込みやセンテンスが自動で欄外に紹介されて出てくる、とか。



デジタルならではの方法で、人間の理解力・記憶力の問題という潜在的な大問題を解決するようになると、電池の持ちなどの多少のマイナス点を補って市場が拡大するのではと思ったりします。



日本のメーカーはビジネスモデルの構築や認知工学的な側面で(これ、考えるところがあるので、今度書きますが)アメリカのメーカーに負けてしまい、強いのは部材開発だけみたいな状況になっていますが、こういう数少ない成長分野では是非がんばってもらいたいですね。