[]生命観を問いなおす

質問:

「環境」と「生命」という言葉を聞いたとき、一番しっくりくるものは以下の3つのうちどれか?


1.「環境」や「生命」が危機にさらされている。将来的な破滅を避ける為、我々はこの危機と戦わなければならない。

2.「環境」や「生命」が危機にさらされている。将来的に大きな社会的変動が起こるだろう。新しい何かを始めるきっかけが眠っている。

3.「環境」や「生命」が危機にさらされている。しかし、今は自分はそれどころではない。




「1」だと思ったあなた。

あなたはきっと森岡さんに批判されます。


ここにあるのは、「我々の外部に敵がいる」という発想です。我々の外部の敵を撃破することで、問題は解決に向かうと考えるわけです。
私は、本書で、この考え方に、くりかえし疑問を投げかけたいと思います。
 
私は異なった意見を持っています。
敵は、私たち自身の内部にひそんでいます。
現代の機器をひきおこした最大の原因は、私たち自身の内部にこっそりとひそむ、生命の欲望なのです。



はい、ごもっとも。

まあ、でも「環境」や「生命」を積極的に考える人たちは、このタイプの人が大多数でしょう。そのことはきちんと認識しておく必要があります。



「2」だと思ったあなた。

気が合いますね。ちょっとお茶でもどうですか?

これはマーケターの感覚だと思います。「変化があるところにはチャンスがある」 商売の納得できる物語を作る際の基本です。

人間は「物語」に弱いと思います。その物語がウソであろうとも、共感できる「納得性」があれば、人は動きます。組織であれば、人は物語を語るリーダーについていくし、お客は満足して商品を買っていきます。

そして、物語を物語らしくあらしめるのが「時系列」です。「昔は〜だった。今は〜だ。だから将来は○○○だ」という時系列の感覚。「過去・現在・未来」。トリロジー。時系列にものごとを3つ並べればそこに物語が生まれます。

環境はまさにこの時系列の問題です。だから、身に差し迫った危機感を感じていなくとも、マーケターの感覚が動く。


「3」だと思ったあなた。

あなたの感覚が最も一般的だと思います。

世知辛いこのご時世。先々のことまで考えて行動するなんてムリムリ。きわめて合理的な考え方だと思います。



以上が、多くの非営利組織が関わっている「生命」「倫理」の周辺の全体フレームだと思います。

僕の感覚は「2」と「3」の中間ですね。だから、「2」の立場に立って「3」の人々に対する訴求の方法を考える、というのが基本のスタンスなのです。


@@その他書き留めておくフレーズ

・地球環境問題が、世界中で語られています。これは「大きな物語復権」だと思うのです。(ポスト・モダンに対して)

・臓器移植とは、他人の臓器をもらってまでも自分が生き続けたいという「エゴイズム」を、みんなでサポートしてゆく行為です。

・現代文明の底辺には、次のふたつがあると私は考えます。すなわち、(1)もっと長く生きたい、もっと快適な生を送りたいという「生命の欲望」、(2)その欲望を精緻なかたちで満足させようとする社会システムと科学技術、このふたつです。

・「どうして生命は、他の生命を犠牲にしようとするのだろうか」「それにもかかわらずどうして生命は、他の生命や自然と調和したいと願うのだろうか」