[]海を飛ぶ夢(2004)

海を飛ぶ夢

たまたまでしょうが、2003年アカデミー賞外国語映画賞受賞作の「みなさん、さようなら」と同様、安楽死で映画の幕が閉じます。



03年、04年とアカデミー賞外国語映画賞は、同じテーマを扱ったことになります。



片方は癌に侵されたフランス系カナダ人の大学教授が安楽死を選び、片方はスペインの船乗りが事故で四肢麻痺になり、26年後に安楽死を選びます。



「死の5段階受容説」で有名なキュブラー・ロスは「死ぬ瞬間」の中で、死に行く過程の最終段階として「デカセクシス」という段階の存在を指摘しています。



この映画で、最初から最後まで主人公のラモンが演じているのは、まさにこの「デカセクシス」であり、まさに解脱したような笑顔で登場し、笑顔で語り、静かに死んでいきます。



しかし、ここに悲しいパラドックスがあって、ラモンは、この「死と和解した境地」にたどり着くことによって、周りの人に正の影響を与えてしまい、周りの人々はラモンが安楽死を選ぶことに反対をしてしまいます。



最終的には、青酸カリによって静かに死んで行きますが、本人の境地を、周りとの関係を踏まえて描いたところにこの作品の価値があるように思います。







2004年アカデミー賞

外国語映画賞