[]ヨーロッパ人は本当にQOL重視なのか?

今日、久しぶりに会社の研修を受けました。



テーマは「英国労働法」



性差別、宗教差別などのリスクをどうヘッジするか、という一般的な話と、時期的なテーマだと思いますが、解雇のプロセスにおける法的な留意点などの話がテーマでした。



で、その話の中で「ヨーロッパ人はQOL(Quality of Life)重視なので、そのスタイルを尊重しなければならない」という話が出てきました。まあ、よく聞く話なのですが。







これ、どう思いますか?







確かに、身近なヨーロッパ人は9時に来て6時くらいには帰ってしまいます。さすがに仕事が終わっていなくても帰ってしまうという人はあまり居ないと思いますが、定時が6時なら6時に帰るということは決まっていて、その時間内に仕事を終わらせようとします。



だから、仕事のスピードは速い。が、その分、質は落ちることがある。



日本から来た人の大半が、このヨーロッパ人の仕事のスタイルを見て、「なんだこいつらは。なんて仕事をしない奴らなんだ」と思うはずです。



それで最初は悩むのですが、ちょっと時間が経つにつれ、今日の研修の話のような「いやいや、それがヨーロッパ人の仕事のスタイルなんだから、そこはしょうがないんだよ」というような話を先達から聞き、「そういうもんなのかな」と思うようになるんだと思います。



だけど、これって本当なんでしょうか? 本当にQOLを重視するワークスタイルが欧州の伝統的なスタイルなんでしょうか?





僕はこれは怪しいと思う。





なぜなら、このワークスタイルは「新しい時代/社会を作る」とか「革新的なプロダクト・サービスを作る」とか、そういう熱く煮えたぎる、若者的、革命的な生き方とまったくもって相容れないからです。



ヨーロッパ人も、かつて産業革命の時や市民革命の時は、もっと必死こいて働く人たちだったのではないかと思うのです。それがたまたま今は(といっても結構ながい間だけど)豊かさを享受できる立場にあるので、QOLを追求する人が多くなっているだけなんじゃないかと思うのです。



だけど、正直、世の中こんな人ばっかりだったら社会は前に進みません。前衛思想じゃないけど、ヨーロッパ人の95%くらいはQOL重視だったとしても5%くらいは社会を変えていく(そしてそのためにプライベートの犠牲を厭わない、というかたぶん本人はそれを犠牲とは思っていない)人たちで構成されているのではないかと思うのです。



たまたま、周りに95%のヨーロッパ人しか居ないだけで、それをヨーロッパの根本的なスタイルなんだと考えているだけなのではないか、と。



だから、あまり、このQOL的な考え方、特に「仕事は割り切って家族との時間を大切にしよう」みたいな(インチキ)QOLの考え方には染まらない方が良いと思います。



本当のQOLって言うのは、仕事の時間をスクイーズして余暇を楽しむ、ということではなくて、仕事の時間をスクイーズしたら、仕事以外の刺激・インプットを目いっぱい求めるスタイルのことを言うんだと思います。日本のオフィスのような、だらだらと深夜まで残業するのは最悪ですが、仕事の時間を絞って、パブでだらだらするのも同じくらい大した価値の無いライフスタイルだと思います。