[]春の雪(三島由紀夫)
三島由紀夫は本当に不思議な人。
「金閣寺」、「潮騒」、「仮面の告白」、と来て「春の雪」にたどり着いたのだけれど、これが一番刺さった作品かな。
破滅を求める意思の力を基本のストーリーに置いていて、禁断の危うさがそもそも読む側をひきつけるのだけれど、ここに仏教的な思想が折に触れて挿入されることで深みが増しています。
さらに、そもそも、三島の描写は過剰ともいえるくらい緻密に心象風景を書き出していくので、なんというか、芸術的な金細工のように文章が見えます。
三島自身はこの豊穣の海の4巻を書き終えて、自衛隊の市谷駐屯所に乗り込むわけですが、まだこの政治思想と、作品との関係がどうなっているのかが見えない。
本当に不思議な人です。しかしこの作品は素晴らしい。