[]一勝九敗 (柳井正)

1勝






ファーストリテイリングに転職した友人から「読んでみると良いよ」と薦められて読みました。



なるほど、柳井さんという人は、これは相当に地に足が着いた経営者だなという印象を得ました。



どういうことかというと、考えていることが非常に手堅い。ファーストリテイリングは、幾度かの踊り場はあったものの着実に成長をしていて、フリースやヒートテックなどのヒット商品で急速に成長した企業と印象があります。が、その裏で、タイトルにも現れていますが、失敗することを当たり前としています。ただし回復不能な失敗は絶対にしない。



そのために損切りが早い。筋が悪い、と判断したらすぐに切って出血を拡大させない、ということを何度もしています。スポクロ、ファミクロの撤退、イギリス店舗のリストラ、などなど。 相場で儲ける投資家と同じようなメンタリティなのかもしれません。



儲けるためには勝率は関係ありません。野球ではイチローのように高い打率を誇る方が賞賛されますが、金儲けの世界では打率(勝率)はまったく関係ない。99敗しても、その損失を最小限に抑えて、1勝の時に大きく勝てばそれで良いわけです。逆に怖いのが、99勝していても、1敗の時に取り返しのつかない負け方をしてキャッシュが切れること。FXなんかをしていると、このメンタリティは非常に良くわかるし、良くある市場退出のパターンです。



それから競争優位の源泉が明確。圧倒的なオペレーションの優位性(スピード、クオリティ、ムリ、ムダ、ムラの排除)を目指していて、その企業姿勢をシンプルに広告・宣伝まで落とし込んでいます。トヨタ的勝ちパターンに見えます。ポーターなどはオペレーションの優位性は長期的な競争優位に繋がらない(なぜなら、それはいつか真似されるものなので)、と言っていますが今のところはこれが上手く行っています。



ただ、発言が体系だっているわけではないので、万人にわかりやすい本では無いですね。何を言っていたのか覚えきれないので、何度か読み返さないといけない。そういう意味でついていくのが大変というファーストリテイリングの社員の人たちの発言の意味が良くわかりました。