[]「頭脳の果て」 (ウィン・ウェンガー、リチャード・ポー 1999)
最近、将来、教育産業で起業するような気がとてもします。根本的な興味が「発達」とか「学習」とか「熟達化」とかそういうところにあるんですね。
そういう意味では高校生時代の進路選択はきっと間違っていなかったんでしょう。教育学を専攻するために文学部に行って、そこからスライドしてマーケティングを専攻し、今はビジネスの世界に居ますが、きっと将来、もともとの場所に戻るように思います。
ま、他にもやりたいことがたくさんあるので、その中のひとつとして教育産業ということになるのかもしれませんが。
さて、この本。買ったのは大学生時代。3ページくらい読んでほったらかしにしてあったんですが、なぜか今日ばーっと最後まで読みました。大学のゼミで速読の研究をしようかと思った時期があって、そのときに買った本なのですが10年後の今日に速読してぱぱっと読んだわけです。
この手の能力開発の業界は、自己啓発セミナーとかのイメージがあってどうしても胡散臭さが抜けないのですが、そこを我慢して読むと、いくつか面白い話が散らばっています。
一番面白かったのは、後半の子供の教育のくだり。
「ソクラテス・メソッド」という教育の考え方があって、これは問答法なんですね。教師がとにかく生徒に質問をして、生徒の頭の中での思考と発話を誘発していく、という考え方です。
日本の教育の問題点として「詰め込み教育」というものが挙げられて久しいわけですが、これを解決しようとして導入された「ゆとり教育」が失敗し、今はどうなっているのでしょうか。
「ゆとり教育」も世の中的には完全に誤解されていて、当初の目的を果たすことなく歴史の闇に葬られるようですが、根本的には主体的に考え・発信する人物を育成する、という近代日本からの教育領域における大脱皮が必要なことは今も変わらないはずです。
この本の人たちはイメージ・ストリームという方法論をやたらと強調します。まあ、この方法が有効かどうかは、正直、説明が不十分なので良くわかりませんが、個人の頭の中にあるものを「出す」という方向性としては悪くないのかもしれません。
もうひとつ面白かったのは、脳神経細胞の再充電のくだり。
日常の感覚的に、疲れてくると「頭が冴えない」という感覚は誰しも経験的に判るかと思います。
この原因が「脳細胞の電気的なポテンシャルの低下」だと言うんですね。要するにシナプスの結合は電気的な交流で出来ているわけですが、疲れてくるとこの電気的なものが発生しにくくなるので、思考が冴えない、らしいのです。
そうすると、頭を冴えさせる方策は簡単で、それは脳細胞を「再充電」させれば良い訳です。
会社の研修で「昼寝をしましょう」というものがあったのですが(←この辺がヨーロッパ的でしょ)、確かに短い時間でもうたた寝をすると、起きた後、突然頭が冴え渡るというのも経験的になんとなく判ることかと思います。
これも証明に関する説明が不十分なのでほんとかどうかはわかりませんが、脳細胞を再充電するためには5000から8000ヘルツの高周波を聞くことが有効なのだそうで、これはモーツァルト、バロック、グレゴリオ聖歌に多く含まれているんだそうです。
まあ、そういうわけなので、研修で「昼寝しろ」と言われたにしろ、さすがに会社で寝ていると職を失いそうなので、これからは疲れてきたらモーツァルトを聞くようにしようと思います。