日経ビジネスの特集がやっぱりしっくり来ない。。

先週号かな? 「移民YES」1000万人の労働力不足、という特集が日経ビジネスで組まれていました。





日経が嫌いなわけではないのですが、今回の特集も、ちょっと正直マトが外れてるんじゃないかと思いました。



一番おかしいな、と思うのは特集の背景として前提にしている「移民を受け入れなければならない理由」



「3Kの職場(農業、漁業、介護など)で、日本人の働き手が減った事情があり、これまで日本は外国人労働者で不足分を補充してきた。にも関わらず、政府が移民受け入れの制度を整えていないので、今後移民は日本を避けるようになってしまい、日本は深刻な労働力不足に陥る。だから移民政策を改善すべきだ」



という主張が特集の背景に見えるのですが、この考え方は悪意を持った言い方をすると下記のようになるのではないでしょうか?



「日本人はつらくて給料の安い仕事はしたくない。だからそういう仕事は移民の外国人にやってもらう必要があって、そのために移民を受け入れる必要がある」





これは移民に関する現実の一側面だとは思いますが、全体を現しているとは思いません。あまりにも焦点が「下層からくる移民」に限られすぎているように思うのです。



第二次大戦中のアメリカはヨーロッパから大勢のユダヤ系知識人を亡命者として迎えました。僕が非常に尊敬しているレヴィ・ストロースも同じ時期にマルセイユからアメリカに亡命しているし、ここで同じくアメリカに亡命していたヤコブソンの音韻論に影響を受けて構造主義の考え方を構築したといわれています。 (余談ですが、レヴィ・ストロースはついこの間の10月末に亡くなったようです。残念です)



15世紀にオスマン朝トルコによって東ローマ帝国が滅亡させられると、多くの人々がイタリアに移民し、これがルネッサンスに大きな影響を与えたといわれています。



つまり、移民というのは、人の流れによるダイナミックな社会変革の契機として捉えるべきで、この視点には下層の移民も上層の移民も関係なく含まれるべきだ、と思うのです。



うがった見方をすれば、今回の日経ビジネスの特集の組み方は、「汚い仕事は移民にやらせろ」みたいなつまらない話に話題を矮小化していると見られてもおかしくなく、議論の組み方に問題があると感じます。



ワタミの渡辺さんが「移民YES」と言うのは分かります。それは経営上の問題だからです。経営者なら固定費は削減したいと思う。しかし、ビジネス誌がその視点だけで移民を語って良いのかという点には疑問が残ります。もうちょっと大きな国家デザインというかソーシャルデザインの観点も含めて議論を展開して欲しかった。そんな風に思います。



別に厳しく見ているわけでは無いのですが、どうも日経ビジネスの特集は頭のなかに「?」が浮かぶことが多いですね。