[]「オタクで女の子な国のモノづくり」 (川口盛之助 2007)

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アーサー・D・リトルのシニアマネージャーの川口さんの著作です。



ここのファームは面白くて、ちょっと変わってるんですよね。技術系のコンサルテーションが得意で、虎ノ門にオフィスがあるんですが、外資系のファームのオフィスというより、官公庁の建物のような香りがちょっとします。



製造業はこれまで日本の根幹として国を支えてきました。アメリカやイギリスのように、製造業をあきらめて金融などその他産業に行くという選択肢は、いかに中国やその他の新興国が台頭したとしても、日本には無いように思います。



だから、テクノロジーとどう向き合っていくのか、将来の技術と社会をどう読むのか、を深く考えて戦略を作ることはとても大切で、そういう意味でADLのようなファームの仕事はとても大切だと思うのです。





さて、本書の内容に関して。





日本の外に住んでいるせいか、本書の全体を貫く主張には同意しにくい部分があるのですが、端々に重要な指摘が含まれていて、色々と考えさせられます。



同意しにくい部分は、やはりガラパゴス系の商品群を必要以上に賛美しているところ。 日本人というもの、日本国というものの特性を商品作りに生かして差異化をしていこう、というのは良いのですが、それは必ずしもガラパゴス系のキワモノにはならないと思うのです。





読みながら、ずーっとヨーロッパ人の日本製品に対する見方を考えていました。





日本のブランドでヨーロッパ人から評価が高いものに無印良品があります。



細やかさとシンプルさが同居した無印のコンセプトは周りのヨーロッパ人にも人気があって、きちんと日本のものであるということも理解されています。



対照的に、本書で紹介されているようなガラパゴス系のキワモノは、僕の担当商品にもいくつかありますが、やや冷淡、もしくは一時的に面白がってお終い、になるパターンが大半です。



日常の例で言えば、料理をするときに日本人はクレラップを非常に良く使いますね。カッターがふたの側についていて非常に使いやすいと思うのですが、UKのスーパーに行くと、いまだに大昔のサランラップ(切りにくくて、良くラップが絡まるやつ)が普通に商品棚をしめています。



日本の外の人たちはそんなもんなんだと思うのです。ラップの例で言えば、どうしてあんなに使いにくいラップをみんな使っているのか、正直まったく理解できませんし、イギリス人とは言えどクレラップ系のものの方が便利だ、と思うに違いないのですが、それでもなぜかきっとイギリス人は絡まるラップを使い続けると思います。



この辺の事実が日本に居ると非常に理解できない。



でも、それが現実だと思います。



日本の市場だけでやっていくのなら良いのですが、日本に特徴的な感性の中にも、グローバルな市場で高い価値をもつものとそうでもないものがあるということをきちんと意識した方が良いと思います。



この先の日本に製造業にとって重要なことは、日本という特性から生まれる独自性を武器にモノづくりをすることもあるのですが、それよりも、とにかく冷静に考えて優先順位を見極める目を持つことだと思います。



その見極めが出来たときに、無印のような日本的かつ受け入れられるMade In Japanのものが生まれるのだと思っています。