[]日本の「復讐」の表現(映画「告白」)

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リベンジ映画と聞くと、パク・チャヌクの復讐3部作がやっぱり頭に最初に浮かびます。Old Boyの印象が凄く強い。 あれは、15年間の軟禁の復讐を、もっと大きな復讐が覆うという構造が秀逸な映画で、チェ・ミンシュクの演技も素晴らしかった。



この「告白」は日本映画なんだけど、パンチ力で韓流作品と良い勝負。しかも、このテーマは韓国では書けないと思う。



韓国映画って、家族や社会の「血の濃さ」の問題を繰り返し繰り返し描いているように思います。パク・チャヌクの復讐三部作に限らず、「グエムル」なんて怪獣映画だけど、描いているのは家族の絆だし、「母なる証明」や「息も出来ない」も家族関係の問題。



「血の濃い繋がり」ゆえに問題が起こるというのが基本構造で、そこには社会に繋がった「かけがえの無い個人」が殺されることのあり得なさが描かれています。



一方、「告白」は神戸の酒鬼薔薇事件で見られるような、「命の軽さ」の問題を前提にしているように見えます。「どうして人を殺してはいけないの?」という問いが成立してしまう(そして、その問いに「命は大事なんだから人を殺してはいけないの」と答えるのはとても難しい)社会的背景があって、その中での復讐の在り方を描いた作品なんだと思います。



松たか子の異常に淡々とした告白の様子と、その淡々した語り口とは裏腹の惨い復讐の内容が、日本社会の気味悪さをとても上手く表現していると感じます。



ちなみに、「命の軽さ」の問題は、多分、日本が近代化する過程で失われて行った社会の繋がりの問題と表裏一体になっていて、そういう意味で全ての先進国と、今まさに発展しつつあるアジアの国々共通の問題なんだと思います。



日本に留まらず世界に向けて発信して共感を得る可能性のある映画だと思います。



素晴らしい日本映画でした。