[]ブランドのDNA

組織で働くようになって来年で4年目になるわけですが、つくづく思うのは、そこらじゅうに「モノを売れるようにする」チャンスが転がっている、ということ。


大きな組織同士が戦うときに、勝敗を分けるのは「戦略の優劣」ではないように思います。もちろん、片方の組織が明らかに優れた戦略に基づいて行動している場合は、それによってマクロな優劣が決まってしまうわけですが、多くの場合はすべてのプレーヤーが「それなりに正しい戦略」をもって競争をしていると想定するべきです。

それなりに正しい戦略を持った複数の大組織が競争をしているとき、相手を出し抜く機会はどこにあるのか。


1つの答えはコミュニケーションだと思います。


特にメーカーの場合、モノを企画し、開発し、生産し、宣伝し、販売する、というビジネスシステムが細分化されすぎていると、良いことはほとんどありません。「細分化されすぎ」というか、そのすべての工程を同一人物が行っていない場合、基本的に売れないと思います。 商売の流れが「伝言ゲーム」になってしまうと、間違いなく最初の伝言は客まで伝わりません。

まず、企画・開発している人は誰のためにモノを作っているのか分からなくなり、「○○セグメント」とか言う、まったく実体のない抽象的な客層に対してモノを企画し始めます。そもそも存在しない人なので、その商品を見たときに、その人がどういう反応をするか、活き活きしたイメージなんて湧くわけがなく、結果とんでもない商品が企画されます。

ビームスの「店で5人の「早い客」を見つけて仲良くなれ」というルール、ディズニーの「月に2回はパークに行って客と遊べ」というルール、伊勢丹のバイヤーが自分の商品を店頭で接客しなければならないというルール、パタゴニアにアンバサダーという契約ご意見番が居るという事実、シマノの商品を最後はシマノレーシングチームがテストするというルール、すべてがその人の顔を思い浮かべながらモノを作る「客、しかも普通ではない客」が居るという点が重要です。

大半の企業は、組織が大きく、それを突き刺す顔の見える客をつかんでいません。逆に言えば、商品企画的にはものすごいチャンスが転がっているわけで、モノ作りの基本的な考え型をシフトすることで他社を出し抜くことは可能です。


宣伝も販売も同じです。卓越した熱意を持ってモノを売り込んでくる人ってそんなに多くありません。伝言ゲームの末端の方に居ると、最初の熱意(もともとあったのかどうか怪しいものですが)はだんだん薄れてくるからです。ある商品を本当に(個人的に)気に入った時の「熱」の入った売り込みが出来る人ってそんなに多くありませんから、そこで突き抜けるチャンスがあるわけです。


この本は、15のブランドのケーススタディみたいなもので、有名な話も、他の人がもっと良いケースを纏め上げたブランドの話もありますが、様々な事例を頭の中に入れておくものとしてお勧めです。 数時間でさらっと読めますし。