[]不毛地帯2

不毛地帯2

シベリア抑留から帰り、国防絡みの受注合戦に巻き込まれるまで。



「国に尽くす仕事をしているか?」、「棺おけに入る前に人生でいくら稼いだか数えるのが今から楽しみですねん」、「難しい仏教の経典を要約すると共生ということだと思う」



沈まぬ太陽の主人公である恩地元もそうだと思うのですが、山崎さんのストーリーには「自分の才能を生かせない」という状況は不幸である、という前提が含まれているように思います。



壱岐正は、陸軍参謀としての自らの才能を商社の中で生かし始めるのですが、それは幸福を追求する人間のごく自然な行為に見えます。この「自分の才能を生かすことが善である」という価値観を「国のために、、」「棺おけに、、」「共生、、」という価値観が取り囲んでおり、それらの価値観のせめぎあいがストーリーを進めていく構造になっています。



この人の小説が面白いのは、そうした明確な価値観を、登場人物一人一人に割り当て、人と人との関わりが、価値観のせめぎあいになるように状況設定をしているせいのように思います。