[]Seeing What's Next (「明日は誰のものか:イノベーションの最終解」)クリステンセン, C.M (2004)

イノベーションの最終解




この「イノベーションのジレンマ」関係の理論は非常に切れ味が良くて実践的です。将来のビジネス環境に備える上でここまで使える理論も珍しいんじゃないかと思います。理論から考える必要性を実感する上で最良の例かも。





現象を丁寧に見たり、色々な領域の専門家の話をしたりしていると、あるとき分析の神様が降りてきて、シンプルだけど切れ味の良さそうな仮説を思いつくことがあります。僕らがメタフォリカル・ブランディングというフレームワークを思いついたのもこういう思考プロセスの中でした。



現象から理論的な枠組みを作って、その枠組みから現象を眺め返す。これは非常に知的な営みで、かつ社会の役に立つ。



イノベーションのジレンマは事業計画を考える人たちにとっては非常に役に立つ理論です。



こういう仕事がしたい。







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人間は神では無いので、過去(歴史)を丁寧に分析する以外に、将来を予測する術を持ちません。そのため、去年何が起こったのか、来年何が起こるか、という直近の過去・将来に関しては考えることが出来ますが、例えば10年以上の単位で何が起こったのか、何が起こるのか、ということを考えることが非常に苦手です。



だから、こういう仕事が出来る人は社会の中で大きな価値を出すことが出来る。



理論が実践的な価値を持ってくるのはこういう状況によります。この理論が使いやすい理由は、時間軸と顧客満足度、という比較的わかりやすい概念を2軸に話を展開していることが大きいと思います。人間の脆弱な認知システムでも、この理論は充分に理解できるし、使い勝手の良いサバイバルナイフのように色々な用途に応用ができます。





実際、イノベーションの理論を手がかりにすると、僕が今関わっている業界の将来動向に関して、数年後には多分こうなる。その後は多分こうなる。という複数の仮説が浮かんできます。実証する術は無いけれど多分その仮説通りに世の中は進んでいくんじゃないかと思っています。





会社としては、その変化に対して先手を打っているのかどうか。



昨今、「成長領域が見当たらない」という台詞を色々なところで聞きます。どこまで考えて「成長領域が無い」と言っているのか知りませんが、成長は必ずしも上のマーケットや未開のマーケットにあるわけでは無い、ということをイノベーションの理論は教えてくれます。



少なくとも、自分が関わっている商品領域は破壊的イノベーションの次の事例に確実になっていくと思うし、そこには大きな成長の余地があります。



累々と積み重なれた破壊のイノベーションに駆逐された企業の屍に名を連ねないこと。僕らが考えなければならないのはそれだけです。