[]iPadを見て思ったことを3つほど





結局、iPadという名前でしたね。 iSlateの方がカッコいいようにも思いましたが。



iPad、買うかどうか迷っているんですが、ジョブズのプレゼンテーションを見ていて3つほど思ったことがあります。





まず第一に、この商品コンセプトはあまり良くないかもしれない、ということ。 触っていないうちにあんまりネガティブなことは言うべきではないのかもしれませんが、これが率直な第一印象でした。





エレクトロニクスメーカーが良く陥る罠の一つに「何でも出来る、は何にも出来ない」というものがあります。(似たような訓戒に「みんなの為の商品は誰のための商品でもない」というのもあります)



昔、PCがワープロ専用機を駆逐したときのように、必ずしも正とは言えないこともあるのですが、「あれもできます、これも出来ます」とセールスマンがプレゼンしている時は危険信号だと思って疑ってかかったほうが良い。





10インチのインターフェースと言うものは必要です。それは紙という最後にして最大のアナログインターフェースをデジタルに変換する上で、これくらいのサイズが無いと読めないからなんですが、その機能を満たすには「何でも出来る」iPadはちょっとオーバースペックに思います。 ガジェット好きのお兄さん達は、何でも出来てすごい、と言っていますが、僕はそうは思わない。なぜならビデオや音楽やWebブラウジングは、PCかiPhoneで十分機能がカバーされていて、iPadはリダンダントだからです。



むしろ、長期的には電子ペーパーを発展させて、「折り曲げられる」、「巻物のように巻ける」カラーのインターフェースを早く実現して、文字を読むことに特化しつつ、一応ビデオとかも見られる、商品を作ったほうが筋が良いと思います。文字をデジタルで持ち歩く利便性に根本的な問題があるのだから、その根本に対するストレートな解決策を出した方が良い。



もし、「あれも出来ます、これも出来ます」ということを言うのであれば、「Webも見られます、メールも出来ます」、というのではなくて、例えば、「新聞を読んでいて、記事の写真をタッチすると動画として動きます」とか「わからない単語はその場でwikiに繋いで調べられます」とか「古い新聞のアーカイブが全部入っています」とか「似たような本のお勧めが出てきます」とか「何がベストセラーなのかその場でわかります」とか「その本・記事についての2次言説にすぐに繋がります」とか、そういう方向での「あれも出来ます、これも出来ます」をアピールしたほうが良いのではないかと思います。





それこそが、「読書」というライフスタイルを変える、という意味でのインパクトのある商品ではないでしょうか。





もう一つ思ったのは、そうは言っても、やはりこれからはAR(Augmented Reality)関係のインターフェースが普及してくるということをiPadは正しく示しているな、ということ。ソフトウェアキーボードは画面が大きくなってより使いやすそうになっていますね。早く試してみたい。



未来の社会はそこかしこがAR化すると思うので、日本のメーカーは率先してその実現に動いたほうが良いですね。この分野はきっと日本はそうとう研究開発をしていると思うのですが、それを魅力ある商品に纏め上げてビジネスにしていけるかどうかが問題です。ドラゴンボールスカウターみたいなものがいつ出るんだろう、とずーっと待っているのですが、来年くらいには出てこないものでしょうか。。



世界カメラ、など、ARの概念はすでに浸透しつつあるので、ここには絶対にマーケットがある。





そして、最後、やっぱりAppleに学ぶべきは、「値ごろ感」を中心に商品戦略を考えているところですね。ジョブズのプレゼンのスライドは非常にシンプルに作ってあって、彼のパフォーマンスと合体して初めてプレゼンテーションとして成立するわけですが、「値ごろ感」のスライドが入っていますね。「こんなにすごい商品が499から!」、と。 あれだけ偉大なCEOのプレゼンテーションに、「たったの499!」という品の無いテレビCMみたいなストーリーを入れてしまうところに、この会社のすごさがあると思います。



日本のメーカーはエンジニアのプライドが妙な方向に高くなっていますね。安く作ることが自慢にならないのか何なのか知りませんが、値段をアピールする商品発表っていうのはほとんど聞きません。この間のTORNEがお手ごろ感をアピールしていて、「おっ」っと思いましたが、ああいうのは例外的。



世の中を大きく動かすのは「値段」で、この傾向は新興国がマーケットとしての存在感を増せば増すほど重要になってきます。これはもうみんなが気づいていますが、それを早く実行に落とし込まないと、取り返しのつかない大変なことになります。 本当は5年前には解決しておく課題だったと思うのですが、日本のメーカーの苦境の90%以上は「値段」の問題です。大変単純。





まあ、そんなこんなで、そうは言ってもきっとiPadは買っちゃうようにも思いましたが、個人的には今後の電子ブックの飛躍に期待したいですね。