[]出版業界のデコンストラクションをスムーズに進めるには? 「電子書籍の衝撃」(佐々木俊尚)

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僕は基本的に紙コンテンツは緩やかに電子コンテンツに取って変わられると思っているのですが、日本の場合はその進展度合いは他国よりも遅くなるかもしれません。



なぜか?という理由はこの本を読むとよくわかります。



日本の出版業界がどうして今のような形態になっているのか、というのは歴史を紐解いていくとよくわかります。歴史があるということは、そこに関わる大勢の人がいるということで、大勢の人には家族がいて、その家族を養うための収入が必要になります。



出版業界は、典型的なデコンストラクションの危機に見舞われています。だから、当然、中抜きされる出版社の機能の一部、印刷、流通、書店、は仕事を守ろうと必死に抵抗をするでしょう。



でも、誰がどう見てもこれまでのバリューチェーンを維持するのは無理筋です。だから、この抵抗が強く、日本の出版の電子化が遅れれば、それは残念ながら大多数の日本人にとってプラスになりません。 先週、講談社から京極夏彦が新刊をiPad対応の電子書籍として出す、と発表しましたが、こういう流れはもっと加速させて、電子出版をベースにした次世代の社会を作って行くことが必要です。



こういう時は、デコンストラクションで職を失う人達の受け皿を作ってあげることが必要です。負け戦が確定した段階で、無駄な抵抗は止めて、どうやって新しい食い扶持を作るかを考えた方が良い。



無駄な篭城戦は、これまでの備蓄を使い果たすだけです。兵糧が残っているうちに、背水の陣で次の食い扶持を探すべきです。出版形態が紙から電子に変わったところで、情報を生産して届けるという基本機能は変わらないわけだから、むしろ、流通が効率化されることをチャンスと考えて、そこで新しいビジネスを作って行くべきです。



外市場に日本発のコンテンツをこれまでに無いやり方で届ける仕組みを作る、とか、国内市場の新しい顧客層を掘る、とか、コンテンツそのものに革新をもたらす、とか、この分野はかなり知的にやるべきことがあると思います。



城にこもって消耗戦をしている場合では無くて、積極的に打って出ればかなり面白い戦いが出来ると思います。出版業界の人にはぜひそういうメンタリティで未来を切り開いて欲しいと思います。