[]日本映画らしい日本映画だと僕は思う 「SRサイタマノラッパー」

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春に大学院の先輩達と飲んだ時に、「面白い映画があるよ」と言われてDVDを買ってみたのがこれ。

率直な感想として、とても日本映画らしい日本映画と感じました。



何が日本映画らしいと思ったかというと、若い青年の人生の動機付けが空回りしているのを描いたところ。「日本ってどういう国ですか?」と聞かれたら、「こういう国」と言っちゃいそうになる心象風景が見事に描かれていました。





考えれば、今の20代〜30代って恵まれない子供たちになっちゃってますよね。



問題はいくつもあって、わかりやすいところでは金銭的に恵まれないのが大きいのだけど、最大の問題は受けてきた教育(学校、地域、家庭、受験、その他すべてひっくるめて)と、このさき生きていかないといけない世の中がぜんぜんマッチしていないところ。



たぶん、僕らが小学校のときは、誰もが第二次産業がこんなに厳しくなるとは思っていなくて、京浜工業地帯やら東海ベルトやら阪神工業地帯の工場で作ったものを輸出する社会前提の教育を受けていたと思うんですね。 そういう社会で必要な能力は「まじめさ」と「忍耐力」で、だから学校教育ではひたすら理不尽で集団的な環境に耐えることを強いられたし、なんの役に立つのかまったく判らない教科の授業をひたすら耐えて頭に詰め込む形式がかえって有効だったのだと思います。(反抗をせずに、言われたことを忠実に実行する人材が良い人材、という前提に立てば)



でも、寺脇研とか、一部のエリート層は、「いつまでも欧米キャッチアップのメンタリティで世界で通用するはずが無い」ということでゆとり教育を導入したのだけど、ゆとり教育のシステムを生かして理想的な教育を提供できる教師があまりにも少なかったために、うまく回らず、結局、今からの世紀を生きていける人の教育が出来ずに来てしまったというのが現状だと思います。



今の20代〜30代は、6歳から15歳、大学まで入れれば22歳までの教育時間を無駄に使ってしまった可能性がとても高く、みんなそれに薄々気づいているからなんとなく鬱屈した気分を抱えてしまっているのだと思います。 (国際競争を生き抜かないといけないのに、習った英語は"This is a pen"とか)



映画の中で、ラップの題材として社会問題や国際問題を入れようとする(=意味のあることに取り組みたい気持ちがあるのにそれが何かわからない。現実と遊離していて痛々しい)、教育委員会のおばちゃんに詰められる(=観ているほうは、こりゃどっちも駄目だな、と思う)、けど1メートル四方から世界に羽ばたきたいと歌う(=若者らしい主張)というシーンを観て思うのは、やっぱりこの日本らしいどん詰まり感だと思います。



そういう意味で良く描いたな、というのが印象です。