[]会社の衰退プロセスをダイエット失敗例にたとえるとこうなる。「ビジョナリー・カンパニー3 衰退の5段階」

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問い:ビジョナリー・カンパニーの主張は信頼に足るものか?





答え:足りない。けど、読み物として面白いから話のネタにはなる。







ビジョナリー・カンパニーは小説として読んだ方が良いと思います。



一生懸命調査をしているのは分かりますが、話の因果関係がすっきり通っていないので、フレームワークとして使うにはちょっと耐久性が心配です。



この3冊目は、前作・前々作とはテーマを変えて、企業がどのように衰退していくのか、そこにパターンはあるのかということを論じています。



結論から言うと、ここで述べられている5段階のパターンは、ダイエットや受験、禁煙などの長期間の忍耐と努力を要求される活動において、人間がいかに失敗するか、という失敗の仕方をメタファーのベースにして企業活動を論じたものだと思います。



分析して5段階を導き出した、というよりは、周りに居るだめな奴ってこういうパターンで失敗するよな、という人の話をそのまま企業に当てはめている感が非常に強いです。



だから、よくよく、主張の因果関係を考えると、ほんとにそれが繋がっているのかどうか、はっきり言って微妙です。(というか、僕は因果関係が通っていないと思う)



下のように当てはめると、ここで述べられていることが「個人の失敗例」の典型パターンには良く当てはまることが分かります。



ダイエットに失敗する人って、最初の1週間くらいはがんばるけど、その後減った体重に慢心(=衰退の第一段階”慢心”)して、また食べちゃうよね。(=衰退の第二段階”規律なき拡大”)で、リバウンドし始めているのにその事実を直視しないよね。(衰退の第三段階”原因からの逃避”)で、怪しい薬とかの一発逆転ものに頼るようになって(衰退の第四段階”一発逆転に頼る”)、結局だめで元より体重増えるよね。(衰退の第五段階”衰退”)



しかし、企業も同じように理解してよいのでしょうか?



同じようには理解できないのではないかと、僕は思います。なぜならば、それこそ前作や前々作で論じられていたように、企業は組織としてどう動くかという側面がとても大切で、「法人」という一個人として理解するには複雑すぎるからです。



ここで述べられている5つの要素は、確かに衰退する企業に見られる特徴なのかもしれませんが、それはパラレルに起こることが多く、1→2→3→4→5、と順序立てて発生するものであるとする主張には無理があります。



「うちの会社はまだ第一段階だ」と考えるのではなくて、それらの症状が見られたら、それがどれであろうと何らかの根本的な問題が起きている、と考えて対処を打っていくことが必要でしょう。



そういう意味で、今回の「3」は、人間のメタファーで書かれているために読み物としては面白いのですが、フレームワークとして使うにはやや無理があるかな、というのが僕の正直な印象です。