[]良書。これからの情報の流通がどうなって行きそうか、が良くわかる (「キュレーションの時代」佐々木俊尚)

キュレーション




これ、著者の佐々木さんが、まさに毎日「キュレーション」という行為をTwitterで実行してくれていますよね。 本人自体が「キュレーションって?」という問いの具体的な答えなので、本の中で書かれている内容は非常に腑に落ちた理解ができます。



マスメディアがまったく自分の役に立ちません。昔は「朝日ジャーナル」を持って大学構内を歩く大学生がかっこよかったという話を聞くのですが、そんな時代があったなんて信じられないほどマスメディアを見る理由がわかりません。



僕は日経新聞は読んでいますが、読んでいる理由は「お客さんが読んでいるから」ということだけです。日経新聞を読んでも、日経新聞が広告で言っているように「世の中がわかる」ようにはなりません。



「世の中がわかる」ようになるためには、世の中の現象を複数の切り口から見ることが必要です。



例えば、最近のエジプト革命の話を政治の切り口で見るのと経済の切り口で見るのとではちょっと見え方が違うし、さらに、政治も「革命とソーシャルメディア」などのミクロの切り口で話される内容と、「アメリカの中東政策」などのマクロの切り口で話される内容は異なります。



また、今回の革命が「誰の利益になるのか?」という問いに対して、「エジプト国民」、「イスラエル」、「トルコ」、「サウジアラビア」、「バーレーン」、「イラン」、「アメリカ」、「ヨーロッパ」、、、、、と「誰の」の主語を変えていくと、まるで違った切り口の話が出てくることに気づきます。



世の中は3次元以上の構造体なので、上から、横から、下から、斜めから、と色々な切り口から見ないと本当の姿は浮かび上がってきません。



この、「複数の切り口から見る」ことにマスメディアがほとんど役に立ちません。なぜかと言うと、マスメディアの記事はそれが、佐々木さんの言う、どういう「視座」で書かれたのかわからないから。記事は匿名で、しかも全国紙は当たり障りの無いことしか書かないので、視座がぼやけていて、その内容をどういう切り口と理解すればよいのかわからない。



それよりも、たとえ多少間違っていたとしても、自分のスタンス、仮説を明示し、どのような視座から発言をしているのかがわかる専門家、ジャーナリスト、ブロガーがWeb上で発信している話を複数読み、彼らの様々な切り口から現象を見ていったほうがよほど「世の中はわかる」ようになります。



普及理論に従い、情報の流通の仕方も次第に変わっていくと思いますが、先々の世界がどうなりそうなのか、納得できる見通しをこの本は教えてくれます。また、情報発信をする側に回りたいのであれば、何を考えなければならないかという示唆も得ることができます。



良書だと思います。