[](ネタばれ注意) これはよくできた映画 (「ブラック・スワン」を観た)

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結論から言うと、僕はこれはかなりよくできた映画だと思います。



ストーリーは至極単純で、エンディングも見る前に大半の人が予想した通りなのですが、エンディングのニナ(ナタリー・ポートマン)の最後の台詞を聞いて、観客は自分たちがニナに「はめられていた」ことに気づきます。



六本木のTOHOシネマズで観ていて、結構混んでいたのですが、僕は思わずエンディングで「あっ!」と声を出しそうになりました。



ニューヨークのバレエ団に属するニナは、新シーズンの演目「白鳥の湖」のスワン・クィーンの役の座を射止めるのですが、清廉なホワイトスワンは踊れても、妖艶に王子を誘惑するブラックスワンが踊れません。その葛藤とプレッシャーの中で、徐々に精神がおかしくなっていく、というのが基本のストーリーなのですが、観客は、徐々に壊れていくニナを「外から」観察していたはずなのに、どこかのタイミングで彼女の狂気の「中に」取り込まれてしまいます。



実は、彼女の狂気は、完璧なバレエを表現する、という極めて合理的な目的に沿ったニナの選択の結果なのですが、観客はエンディングで彼女の言葉を聞くまでそれに気づきません。



壊れて落ちて行くバレリーナを観ていたはずが、実は本人は究極の芸術表現の高みへと少しずつ登っていて、最後の最後で彼女はそれを達成します。その時初めて、観客は自分たちが彼女の狂気の表現の前になすすべなく盲目になっていたということに気づきます。



かなり高度なストーリーラインで、まんまと観客を欺いたナタリー・ポートマンの演技はさすがとしか言い様がありません。



「ダンサーインザダーク」を観た直後のような茫然自失感を僕は味わいました。



とてもお勧め。