[]つまるところ、戦略はヒトの問題に行き着く (「Hot Pepper ミラクル・ストーリー」)

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ここ数日、ネットで話題のHot Pepper。 環境変化があって難しい状況に追い込まれつつあるように思いますが、そういう今の状況は別として、この本はとても面白い。



瀕死の状態だった360°というタウン情報誌が、Hot Pepperという峡域クーポンマガジンとして蘇生し、毎年20〜50%強の成長スピードで6年で400億円のビジネスになった、その裏側が書かれています。



この本が特に面白いのは、この事業の成功の要諦がヒトのマネジメントにあるということをとてもよく表している点にあると思います。本の中の至るところに、いかに戦略を実行する組織を作り、それを維持するか、についての言及があります。





・(マネジメントは)異能を束ね無能を見切る必要がある

・働くモチベーションが「お金を稼ぐ」ことで繋がれた一体感のある組織など成立するはずがない。それはマネジメントが自らの役割を放棄してしまったに過ぎない。

・全員の力を結集して勝つには毎日の稽古が必要だ。その稽古の型を作るのがマネジメントだ。

・科学的で論理的な戦略プランの最後にこの情緒的なプランを加えたとき、それは理屈を超えて実行されるプランになる

・フラットな組織とは、誰がバカなのかが誰の目にも瞬時に明らかになる組織である

・どんな資質や態度を持った人をどんな選考方法で発見し採用するのかが仕組み化できなければ事業にはならない

・自分の仕事がダイレクトに顧客の満足という成果につながる仕組みを壊してはならない





社会人3年目くらいの時に、一度だけ、ここで書かれているような神がかり的な事業戦略に関わったことがあります。とある商品の新規導入だったのですが、相互不信でお互いに罵声を浴びせ合っていた組織が、同じベクトルを向いて商品を売りまくりました。確かに、よく練られた戦略の絵があり、計算されたマーケティングミックスが作られていたのですが、ここでの要諦は、やっぱりヒトのマネジメントだったと思います。



この仕事に関わることが売上を超えた意味を持っているような感覚。組織に貢献することが心から楽しいと思えるような感覚。そういう個人のモチベーションを引き出す天才的なマネージャーの存在が、成功の最も重要な要素だったように思います。



結局、ヒトの問題に行き着くと思うんですよね、戦略って。ビジョナリー・カンパニーに「行き先を決める前に誰をバスに乗せるかを決める」という話があります。ヒトが強い組織は戦略がなくても自発的に正しい戦略を作ることはできますが、ヒトが弱い組織はどんなに強い戦略を授かっても、実行できず負けていきます。



そういう意味で、戦略構築の第一歩は、どんな時でも、どういう組織を作るのか、であるべきなんだろうと思います。