[]飯田さんの主張がコンパクトにまとまっています(「エネルギー進化論: 「第4の革命」が日本を変える)

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230ページくらいの新書ですが、飯田さんの主張がコンパクトにまとまっています。



福島の事故以前から、飯田さんはビデオニュースによく出ていて、エネルギー政策について非常にわかりやすい議論を展開していました。この人は、問題の全体像を念頭に置いた上で個別の議論をするので、話が迷走しないんですね。そして極めて本質的。



エネルギー問題は、原発が危ない・危なくない、安い・安くない、の話の前に、そもそも日本ってどういう社会を目指していくべきなのか、という大論点に直結しています。理由は単純で、衣・食・住に加えて、エネルギーは現代の生活の根本だから。



なので、この大論点を出発点にしないと、各論の論点に入っていったときに、議論している論点がそもそも議論するに値するのかどうかの判断ができません。



で、現状の技術や法律の制約をすべて取り払ったとき、理想的にはエネルギーは自給自足できたほうが良いわけです。これが、大論点に対する仮の答え。



現在、石油・石炭・ウランなど、エネルギー原料は海外からの輸入に頼っていて、GDPの5%程度が海外への流出してしまっていますが、原料を安価に国内でまかなえるのならその方が良い。理由は安全保障上の問題と、お金を海外ではなくて国内で循環させることによる経済効果。これって第二次世界大戦前後からの日本人の悲願だったはずです。



昨今のメタンハイドレードなどの話題はあるものの、資源に乏しい日本の場合、できれば再生可能でエネルギーがまかなえると良いのですが、現状では再生可能エネルギーはその他の発電方式よりも価格が高くなってしまっています。近視眼的な人はこの事実を持って、「再生可能エネルギーは駄目だ」と言います。



だけど、これはおかしな議論。エネルギーを自給自足できたほうが良い、という理想状態に合意できるのであれば(ここの合意を取るのはそんなに難しくないと思いますが。。。)、次に考えなければならないことは、現状と理想とのギャップを明らかにして、そのギャップをいかに埋めるのかを議論することです。その過程で、どうしても理想状態は達成できないという結論になるかもしれませんが、議論の順番の「一丁目一番地」は理想状態をいかに達成するかを考えること。



逆に言うと、それ以外の議論をしても生産的ではないので、止めたほうが良いと思います。



「山手線の内側を太陽光パネルで埋めなきゃいけない」など、もしかしたら現状ではそうなのかもしれませんが、この手の話って意味がないと思うんですね。「現状と理想との間をいかに埋めるか」という論点にまったくアドレスしていないので。 



議論すべきは、



・理想状態を達成するためには、オプションとしては何がありえるのか?

・各オプションのボトルネックは何か?

ボトルネック解決にはどのような条件が必要か?

・その条件を満たすにはどの程度のリソースを投下する必要があるか?



ということを明確にすることです。その上で、そのオプションを追求するのか、あきらめるのかの合意を取れば良いと思います。



飯田さんは、こういう議論の体系が頭の中に入っていて、そこに知識とデータを当てはめて話を進めていきます。判りやすい上に、そもそもの大論点への彼の答えは、将来に希望を抱かせる魅力があります。



福島の事故以降、飯田さんはメディアへの露出が増え、それに従ってああだこうだ言う人もたくさんいますが、もし彼の主張にあまりなじみがないのであれば是非ご一読をお勧めします。