[]復活の鍵はブリコルール(映画「アーティスト」)

theartist_01-3eefd




(*ネタばれ含む)



サイレントムービー時代のスターがトーキーによって没落するんだけど、自分が発掘したスター女優に助けられ復活する、というお話。



単純な映画だけど、いろいろな観方ができて面白いですね。





・競争のルール変更による栄枯盛衰

  −前時代の勝者は過去の成功ゆえに失敗する(≒イノベーションのジレンマ

・一途な女性に助けられる、おっさんの夢物語

  −(≒島耕作

・歳の差ラブロマンス

・現代に復活したサイレント映画

  −最後一言だけ話すけど





だけど、この映画は、没落した勝者がブリコルールによって復活する映画、と観るのが一番面白いんだろうと思います。サイレントからトーキーにプラットフォームが変わっている時に、サイレントの勝者はトーキーに迎合するんではなくてタップダンスで復活を果たします。



このタップダンス、映画の前半で複線が張られているんですが、当初はさして重要なものとしては描かれていません。ぺピー・ミラーが、昔踊ったタップダンスをジョージ・バレンタインの復活のアイデアとして提案します。



昔の記憶から、タップダンスでジョージを復活させようとするぺピーはブリコルール(目の前にあるものを寄せ集めて創造力により新しいものを作る人)なんだろうと思います。



さて、この映画観ていて、ああ、日本の製造業を救うのもこういうブリコルールなんだろうな、と思いました。



日本の製造業は正直ドン詰まっているように見えます。



日本の大半のプレーヤーは、プラットフォームやソフトウェア、デザインやユーザーインターフェースの優劣が勝敗を決める新しい競争ルールに適応出来ていません。映画の中のジョージのように、この先、資産を質屋に売り、復活のきっかけさえつかめず、もしかしたら映画と同様自殺を図るのかもしれません。



希望的観測かもしれませんが、これを最後に救うのはブリコルールなんじゃないかと。



ラクタみたいになってしまった過去の技術やアイデアの中から、何かを寄せ集め、思いもしなかった新しい製品やサービスを作ることで復活を遂げるんじゃないかと思います。



目の前にあるなんの変哲もないものを「もしかしたら何かの役に立つんじゃないか?」と思う感性は、人間が生き残るための知的な力ですが、そういう人がどこかのタイミングで現れるんじゃないかと思います。





・新しい競争ルールに血を流しながら適応する

・新しい競争ルールの中で違う戦い方を試す





どちらを選ぶか。なんか、後者な気がするんだよな。