[]優れた入門書(内田樹「寝ながら学べる構造主義」)
僕が構造主義にはじめて接したのは、橋爪大三郎の「はじめての構造主義」という新書でした。
あれも非常にスリリングな文体で面白かった。ただ、内容はレヴィ・ストロース中心。 内田樹のこちらの新書入門書は、構造主義前史というか、この考え方に影響を与えているマルクス、フロイト、ニーチェ、フーコーに触れながら、レヴィ・ストロース、ロラン・バルト、ジャック・ラカンの解説をしていきます。
しかも非常に判りやすい。
知性っていうのは、万能ナイフのように、形を変えて生活の役に立つものなのだろうと思います。難しいことを難しいままに言うのではなく、その思想を学ぶことが我々の生活をどのように豊かにするのか、それを伝えることができる人のことを知的な人と言うのだと思います。
そういう意味で内田さんは知的な人の像をこのコンパクトな新書の中で体現しているように思います。
個人的にはラカンの理解が一歩進んだことが大きなTake away。精神分析における「対話」の捉え方、これはすごく大切なポイント。
精神分析においては、患者の疾患を治すために対話を作っていきますが、この構造は疾患を治すだけに留まらないと思います。コーチングはまさにそうだし、コンサルティングをする上でも「対話」することで目指すのは、未来に向けた「こういう風な存在であると承認してほしい」というクライアントの願いを作り上げていくことです。
ラカンの周辺には僕が学ばなければならない何かがあるような気がする。そんな気づきを提供してくれたこの本には本当に感謝。