[]他人と生きて行くのはなぜかくも難しいのか?(映画「桐嶋部活やめるってよ」)

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この映画は僕はかなり良いと思います。



リリィ・シュシュのすべて」を思い出させます。



「他人と生きて行くのはなぜかくも難しいのか?」という問いを中心に話は進むのですが、その答えは登場人物1人1人の置かれている環境を描写する中で導き出されていきます。



目立つ女子4人の描かれ方で、どうしてこうも窮屈な人間関係が出来上がってしまっているのか語られていきます。どういうことかと言うと、この4人、全員自分のことしか考えていません。4人グループは理紗と沙奈の2人と実果とかすみの2人に分裂しているように見えますが、このグループは基本バラバラです。



理紗と沙奈は他人からどれだけ敬意をもって接されるか、にしか興味が無いし、実果には劣等感とそこから来る風助への親近感しかないし、かすみは友達とのバランスの中で自分がポジションを保てるか、にしか興味がありません。



人は他人からの好意と敬意が無ければ生きていけない動物ですが、他人からの好意と敬意を如何に受けるかを考える人は、逆説的ですが他人からの好意と敬意を受けることができません。



映画の中で、他人への「無条件の(見返りを求めない)」好意と敬意が示されるのは



・映画部の武文が前田に「ゾンビ映画撮ろうぜ。おれ結構盛り上がってるんだよ。だからお前は絶対に引いちゃだめなんだよ」と言うシーン

・野球部のキャプテンが宏樹を気にかけて声をかける複数回のシーン



の2か所です。この映画が映画部の前田を中心に語られていくこと、宏樹がエンディングで「俺は良いよ、、、、」と崩れること、は、無条件の好意と敬意が、結局は社会を動かす肝だということを物語っているように思います。



僕はこの示唆は的を得ていると思います。高校を舞台とした狭い世界の映画ですが、社会全体を考える上でも面白いと思います。