[]陰翳礼賛

陰翳礼賛

これはですね、自分の精神構造を振り返って非常にしっくり来る本ですね。



谷崎は日本と西洋との比較の中で、陰翳の有り・無しを指摘するわけですが、写真表現、特に白黒の写真表現を見れば分かるように、陰と光のコントラストを付けることは、日本に限らず海外でも定石の表現として存在します。



が、日本の場合はやはり、極端に陰の部分が占める割合が大きいように思います。谷崎が指摘するような日本家屋(厠とか)はまさにそうした陰の部分の大きさが目立つ例だと思います。さらに、それが日本人の精神構造にも大きく影響している、、、というか、もともと日本人の精神構造において、陰がしめる部分が非常に大きいんじゃないか、と思いますね。



先週行った京都も、やっぱり暗くて細い廊下や、木造で歩くとミシミシ言うところとか、ほんとに静かな庭とか、陰の部分がとても多く取り入れられているように思います。で、そういう陰の部分に非常に安心感や心地よさを感じるんですね。



ただ、問題は、そういう大きな陰を抱えた精神は、決してグローバルスタンダードにはなりえないということ。なんだかんだ言って、「白い歯を見せ付けるように笑う」アメリカの精神が現代のスタンダードなわけです。そんな中で、我々はどうやって生きていけば良いのか、谷崎の歯切れの良い批評を読みながら、そんなことを考えました。