[]テレビCM崩壊 (2006)

テレビCM崩壊

Q:バズ、バイラル、もしくは口コミが影響力を伸ばす市場で採用しなくてはならないマーケティングの基本姿勢は?





この問いに答えるべく刊行された本が最近非常に多いですね。この本も題名は「テレビCM崩壊(原題:Life After the 30 - Second Spot)」とキャッチーですが、基本的なテーマは上に上げた問いに対する答えです。



正直、この本の中で描かれている「超能動的に情報検索をし、情報発信をする消費者」は、今のところまだイノベーターの上の方の段階に留まっていて、下の方のフォロアーは昔と変わらず毎日テレビの前に座り、TVCMの影響をもろに受けています。



そのため、白物家電やデジカメのような、消費主体がイノベーターからフォロアーに移ってしまっている商品にとっては、いまだにTVCMが有効なプロモーション媒体であったりします。



あまり、キャッチーな主張に惑わされずに、プロダクトライフサイクルにあったメディア選択をするべきでしょう。 (極端な主張をした方が、著者は自分の主張のマーケティングが楽になるので、こういうタイトルの本が出版されたりするのでしょう。そういうアジテーター的な人の話は参考になる部分だけを上手にとって、後は話半分に聞いておくことをお勧めします)



さて、話を戻して、元々の質問の答えを。





ネットを多用するとか、体験的コンテンツにシフトする、とか、そういう小手先の方法論を言う前にやることがあります。





それは、自社製品のターゲット顧客をもう一度定義しなおすということ。川島蓉子さんが、「富士山型から八ヶ岳型の情報検索行動に変化している」と言っていました。これは、最近の情報感度の高い人たちの情報検索行動が、「その道の達人の意見を強烈に早い検索スピードで、ちょっとづつつまみ食いをする」というように変化していることを象徴的にあらわしたモデルです。 (富士山のどでかい山頂を目指すのでは無く、そこそこに高い山頂を複数目指す)



いずれにしても、情報感度が高く(セス・ゴーディンが言うスニーザーですね)、情報発信の力がある人が参照する「情報の出どこ」を押さえることが大切なわけです。



するとこれは、今も昔も変わらず、その道の「達人」と言われるところにたどり着きます。この人たちの評価をどのくらい獲得できるか、ということが、特にメーカーにとっては非常に重要になってきます。



和田充夫さんがブランディングに関して、作り手とユーザーの間の「クロス・パトロナイズ」された関係が重要と言っていましたが、企画・製造・マーケティングのすべての段階で、どれだけユーザーを巻き込んで商品を作れるか、ということが昔よりも重要になっていると思います。





結局、メーカーにとっては、消費者環境がどう変わろうが、今も昔もやらなければならないことは大して変化していません。あまり、変な話に惑わされずにやるべきことをしっかりやりましょう、ということですね。