東洋経済12月13日 「家電炎上」
問題0702:もし薄型テレビのマーケティング戦略を作れと言われたらどうするか?
東洋経済の記事では「生き残りは体力勝負」という書かれ方をしている薄型テレビの販売競争。北米市場はプライシングがマーケティング・ミックスに占める割合が高いので「体力勝負」、つまりどこまでのプライスダウンに追従できるか、というポイントが重要であることは反論の余地はないでしょう。
ただ、そういう状況においても、正確なマーケティング戦略は組まなければなりません。もし、薄型テレビのマーケティング戦略を作れ、というミッションが落ちてきたとしたら、即座に考えることは次のようなことだと思います。
?自分が強者なのか弱者なのか確認する
<北米市場>
ソニー:16.2%
サムスン:15.3%
松下:11.7%
フィリップス:8.0%
LG:5.8%
市場的影響シェア:26.1%を超えるブランドが1つもありません。なので、全メーカーが潜在的弱者ということになります。逆に言えば、効果的な一手を打てば、シェアが大きく変動する可能性を秘めているということになります。
<ヨーロッパ市場>
サムスン:19.1%
フィリップス:17.5%
ソニー:12.3%
LG:10.6%
松下:9.5%
これまた市場的影響シェア:26.1%を超えるブランドが一つもありません。状況はアメリカと同じですが、ヨーロッパは流通のしくみがアメリカとは異なるので、効果的な一手はアメリカとは異なってくると思います。
<日本市場>
シャープ:34.6%
松下:23.9%
ソニー:16.6%
日立:7.1%
東芝:7.0%
シャープが市場的影響シェア:34.6%を超えており、また上位3社のシェア計が75%で三大寡占の市場構造になっています。シャープが強者ということになりますが、その地位は不安定で下位逆転が十分あり得る市場です。
?ターゲットシェアとコンペティターを特定する
例えば、自分が北米のソニーであったとしたら、26.1%のシェアを取る事をターゲットにし、コンペティターとしてはサムソンを見つつも、正面対決をすると資金力で不利になることを考え、LG、フィリップス以下の下位メーカーからシェアを奪うことを第一に考えます。
同様に、ヨーロッパのソニーだった場合は、ルート3の原則に従い、上のフィリップスを狙うか、下の松下・LGを狙うことを考えます。
日本市場のソニーだった場合は、シャープとの差がルート3倍以上あるので、上位に挑むことは考えず、日立・東芝・その他の下位メーカーを落とすことを考えます。
?隙間を探す
各地域・ディーラー・店舗に対する全プレーヤーのリソース投下量を調べ、競合の対応が手薄になっている隙間を探し出します。そこに、集中的にリソースを投入し、相対的安定シェア:41.7%を取りに行きます。このシェアを取ると、下位プレーヤーの逆転が難しくなるといわれているので、オセロの四隅の石のように、後々の地域戦略に効いて来ると考えます。
?弱者からシェアを奪う
ターゲットシェア・コンペティターの特定で定めた基本戦略に従い、弱者が投入しているリソースを上回るリソースを投入し、弱者の商品を店頭から外し、代わりに自社の商品スペースを広げます。弱者に対しては確率戦に持ち込むことが原則なので(リソースの差の倍数比は階乗比のダメージになるので、投入比率に差があればあるほど効果的)、絶えず弱者がどれくらいのリソースを投入しているかを確認します。(粗利、セールスのケア、など変数は多い)
十分なシェアが取れるまでは強者には戦いを挑まない。
?消費者訴求に優位になる差異化を商品に要望する
ニーズとウォンツの歴史的変遷を描き、近い将来に消費者訴求に優位になる差異化のポイントを決めうちし、それを商品に反映させるよう要望をする。
自社にとって望ましい消費者知識像(ブランド)を設定し、それを達成するためのプロモーションプランを策定していく。
実際にマーケティングを行っていくと、当初考えていたプランは中々難しい状況に直面するのが常ですが、状況に応じて対応はしつつも、勝つためのグランドプランが無いとどうにもなりませんので、戦いに入る前に十分な検討が必要となりますね。
厳しいとは思いますが、やりがいはある仕事だと思います。
問題の答え:上記グランドプランの作成を考える