ポストモダンマーケティング (2005)
「あの」ステファン・ブラウンの題名もそのままずばりのポストモダン・マーケティングの本。
モダン・マーケティングの中心テーゼである「顧客志向」に対するアンチテーゼ。なので、逆に言うと、「顧客志向」というスタンスを自分の中で持った上でないと、ステファン・ブラウンの主張の真価はわかりません。
アンチ顧客志向のマーケティング(マーケティーズ?)のポイントを、"TEASE"の文字遊びで表現しています。完全に駄洒落ですが。。
T:Trickey
E:Exclusivity
A:Amplification
S:Secrecy
E:Entertainment
うちの会社に「こりゃすごい」と思う、とあるプロダクトのマーケティング課長が居るのですが、彼の仕事の仕方を見ていると、まさに"TEASE"そのもの。社内の人間の度肝を抜き、バイヤーの度肝を抜き、パブリを有効に使い、お祭り騒ぎを起こしてモノを売る。
うーん、確かに、教科書通りのマーケティングはこれっぽっちもやっていないけど、MBAのケーススタディに収録されてもおかしくないくらい戦略的なマーケティング活動になっているわけです。
マーケティングも勉強しすぎると管理的・エンジニアリング的フレームワークに偏りすぎるので、アンチテーゼとしてステファン・ブラウンの主張を心にいつも置いておくことは大変重要だと思います。
大学院時代に、ポストモダンマーケティングの第一人者として記憶していた人の著作だけに、非常に多様なケースの紹介があり、それを読むだけでも価値の有る本だと思います。
・ビーニー・ベイビー
・バーキンのバック
・タンゴマン
・ブレアウィッチプロジェクト
・リーバイスレッド
・デビアスのダイヤモンド
・クリスピークリーム
・グッチ
・FUCK、ベネトン
・ロズウェル
・Leeの秘密の暗号
・AIの予告Web
・映画「ラッキースター」の予告CM(実はベンツSL500のCM)
・アメリカ人の55%がJFK暗殺説を信じている
・ハリーポッターはTEASEマーケティングの代表格
CRMとは"Creeplily Repellent Marketer"の略であると嘯いたと思ったら、現代マーケティングはFMCG商品にあわせて発展してきたので、適応できない商品群(例えばエレクトロニクス)もあるという議論を紹介するなど、今の時代のマーケティング教育を受けてきたマーケターにとって自戒の念を思い出させる良書です。
一読をお勧めします。