ミリオンダラー・ベイビー (2004)
ちょっとずるい気がするんですけどね。
何がずるいかというと、安楽死とか自殺幇助とか、それだけで3時間の映画が作れるテーマを、メインテーマの単なるスパイスとして使っているところ。
そのおかげでメインテーマは引き立っているんですが。
マギー(ヒラリー・スワンク)は、事故の後意識が戻った直後に、「自分を守れという教えを守れなかったことをダン(クリント・イーストウッド)に謝って欲しい」とエディ(モーガン・フリーマン)に頼みます。
キュブラー・ロスは「死ぬ瞬間」の中で、死に至る5段階節を唱えています。通常はこのような事故に巻き込まれた場合は「衝撃」や「否認」、「怒り」という段階を経るモノですが、マギーの態度は最初からそれらを超越して「解脱」の段階にあるように見えます。
悟りの境地です。
だから観ている方は、あまりのその純粋さに心を打たれ、涙するのだと思います。
この映画はクリント・イーストウッドのアメリカンドリーム観を表現したものだと言われていますが、ボクシングというモチーフを通じて仏教観さえ感じさせるストーリーを書いたこの作品は一見の価値があると思います。
ちょっとずるいけどね。