[]日本の難点 (宮台真司 2009)

日本の難点




久しぶりに宮台さんの本を読みました。



なんか、丸くなった?という印象がありました。おそらくそれは、昔のブルセラを語っていたころから、結構話題が広がってきていて、特にこの本の半分以降はアメリカと、アメリカと日本との関係に関しての話になっているための印象のように思います。



極めてまっとうな議論を展開している、と思いました。



アメリカは今非常に厳しい状況にあって、国がデフォルトしてしまうかもしれないということが、そこかしこで言われています。世界が多極化していく中で、アメリカの相対的なポジションが低下していくのは事実として、さて日本はどうするのかということが、今を生きる日本人の大きなテーマのひとつだと思います。



教育論のところで、



「空手の極意とよく似ていますが、「何をするにも相手の反応を予測し、相手が反応する前に既に対処を終えている」ような構え(行為態度)こそが必要です」



と言っていますが、これは国際関係において日本人が取るべき態度に関しても当てはまると思います。相手の強み・弱みを見定めて、流れを見て弱みを露呈させたところで、したたかに有利な交渉を展開する。そんなずるがしこさが必要だと思います。



中国に対してもそう。自立した小国家として生きていくためには、どうしてもしたたかさが重要です。



孫子的に言えば「善く戦う者は、これを勢に求めて人に責めず」 小が大を飲む気迫と知恵が必要だと思います。世界の中でのポジションにあまりにも無自覚だったせいか、この先の(世界の中での)日本をどう戦略的に位置づけていくのか、という議論にあまり慣れていません。



とにかくアメリカだけを見て、アメリカにキャッチアップすることを目標にして成功してきた道(特に製造業)はすでに途切れてしまっています。80年代後半から米・英が舵を切った金融産業の道も、どうも胡散臭さがつきまとっています。



日本の差別化が非常に問われているのですが、どうするつもりなのか。そういう話をしたいですね。