[]心とは無数のエージェントの相互作用で作られた社会のことである: 「心の社会」(マーヴィン・ミンスキー)





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認知科学や人口知能の分野では大変有名な本で、せっかくのGWを利用してちょっと読み返してみました。平易な文章で書かれているのですが、意味を理解するのはそう簡単ではないので、こういう本はまとまった休みがある時で無いとなかなか読めません。



学生の時に読んだ時は、心の中に小人のようなエージェントがたくさん住んでいて、それが関係し合って高度な作業をこなして行く、というイメージを持っていたのですが、本書の内容はちょっと違っていました。記憶違いですね。小人というより、もっと神経細胞のようなイメージでエージェントというものが描かれていて、脳科学の解説書のような印象を今回は持ちました。



読み返してみて一番の収穫だったことは、ゲシュタルトに対する考え方がちょっと変わったことかな。部分の総和が全体と一致しない、というゲシュタルトの基本的なスタンスに対して、筆者は、確かにそうだけれど、そう見えるのはエージェントの関係性の要素を考慮に入れていないからだ、と言います。そして、ゲシュタルトという名前をつけてしまうことによって、その部分の解明が実は遅れてしまっているんではないかと主張しています。



生物学が昔に持っていたような生命の神秘的な要素を無くし、要素還元的主義的な目線で見られているように、心の問題も機械的なものとして解明される、という立場には関心します。ものすごい割り切りだな、と。



最近、社会を分析する目線は物理学ではなくて化学のメタファーで考えた方がうまく理解できるのではないか、と思っています。物質と物質が合わさると化学反応が起こってもとの物質とは違うものが出来ます。世の中の現象がゲシュタルト的に見えるのも実はその化学反応が原因なんではないか、と。