[]みんな日本の生きる道を考えている 「フェラーリと鉄瓶」(奥山 清行)





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日本の製造業がうまく行ってきた理由はありますが、代表的な考え方に「工程イノベーション」で卓越していたから、というものがありますね。OECDの生産性比較を見ても、ブルーワーカーの生産性が高いのに対してホワイトワーカーの生産性が低いというように、トヨタに代表されるような製造における卓越性が日本の製造業の強さだった、という理解です。



これ、ポーターに昔から「日本企業には戦略が無い」といわれてきたポイントなのですが、特に90年代以降は新興国にキャッチアップされてしまって、すでに強さの源泉足りえなくなってしまっています。



じゃあ、これからどうするの?という問いがあって、本当はもうこれは答えが出ているんですよね。だけど、すでに作ってしまったインフラやら組織があって、それがなかなか実行できないというのが今の日本企業の苦しさの源泉だと思います。



さて、この本ですが、フェラーリのデザインのディレクターをしていた著者が前半はイタリアと日本の仕事文化の比較を、後半は日本の生きる道について語った本です。



イギリスも生活しにくいなーと思いましたが、イタリアもなかなか大変そうな印象ですね。後半のくだりは、クリエイティブクラスに関する話ですね。今の日本をパーッと見回して、今から将来にかけての競争環境で生きていけそうな人がそれほど多くないので、本当に暗くなります。



本当はゆとり教育が、次の世代の人材の競争力を高めるための制度的な改革だったのに、それが意図通りに成果を上げていませんね。日本はこのまま行くと失われた10年(っていうか、もう20年になりますが)どころか、このまま失われた国になって行くのだと思います。



フィンランドの場合、ソ連邦の崩壊後に教育改革を行って10年で高教育国家として名をはせるようになりました。日本は昨年民主党が政権をとって、教育に関して手厚い政策を採るはずなのですが、果たしてそれが間に合うのか。



これから生まれてくる子供だけでなく、今の20歳代後半までの再教育で国を再建していく必要があるのですが、時間的な余裕はもう無いと思うべきです。