[]人の人生って断片を繋ぎ合わせてみる方がよく見える 「或阿呆の一生(芥川龍之介)」

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これは芥川龍之介の死後に遺稿として発見された原稿で、断章形式で書かれています。

一つ一つの章はとても短く、それぞれの間には直接的な関係はありません。しかし、読み進めていくと、何かぼんやりとしながらも、共通したことを語っていることがなんとなく見えてきます。



ジグソーパズルの数ピースから全体像を想像するように、読者側が働かせることが要求されるのですが、100年近く昔の日本という環境で、ある文学者が感じ・思っていたことが透けて見えてきます。「自分の将来に立ちはだかる漠然とした不安」が表現されていると言われていますが、僕は何やら美しいものを感じました。



自伝って、時系列で、ある価値観に基づいて書かれていることが多いのですが、断片を繋ぎ合わせてみたほうが作者の意図によらない本質的なものが見えるのかな、と思いました。