[]結局、アメリカ側からの視点でしかない Hurt Locker (2008)

hurt locker




"The dear hunter"と内容がかぶります。20年経っても、結局アメリカ人の戦争観っていうのはこういうものなんだなと思った内容でした。



映画の内容はイラクの爆弾処理班の話です。生と死の極限のストレスの中で、それに最後まで適応できない普通の人と、そのストレスに適応してしまった(ゆえに戦場でしか生きられなくなってしまった)人を描いていきます。



The dear hunterのクリストファー・ウォーケンの人生(ベトナムで賭けロシアンルーレットの世界に留まる選択)と、イラクに戻る選択をしたジェームスがダブります。描き方には差がありますが(The dear hunterの方が圧倒的に悲痛。ロバート・デニーロとのロシアンルーレットのシーンは、壮絶)、基本的にこの2つの映画がとっているスタンスは一緒だと思います。



すなわち、アメリカの戦争をアメリカ人から観たら何が見えるか、というスタンス。



どちらの映画もアメリカが政治的な理由で始めた戦争の不条理を描いているのですが、それをアメリカの兵士の視点から書いていきます。アメリカの映画なのだからそれ以外には描きようが無いのかもしれませんが、そういうスタンスを取ることで、相手国側の視点は100%欠落します。



The dear hunterのベトナム兵がどれも同じように見えたのと同様に、Hurt Lockerのイラク人もどれも同じように見えます。爆弾を体に巻かれ、自爆テロに仕立て上げられたイラク人の中年男性でさえ、「俺には家族が居て、、、」という台詞を繰り返させるだけで何の個性も表現させていません。



戦争の描き方は、2カ国のそれぞれにとっての意味合い×2カ国のそれぞれの関係者の視点、の最低でも4つのスタンスの取り方があるはずですが、アメリカで作られる映画はいつも「アメリカにとっての意味合い」×「アメリカ人の視点」のパターンでしかありません。



最後に兵士の苦悩や不条理を描くので中立的なスタンスをとっているように見えるのですが、根本的には偏ったスタンスで作られた作品でしかない、ということは念頭においておく必要があると思います。