[]間違った示唆を出しているのでは?日経ビジネス「トヨタの見えざる未来」
「No1になったからバッシングされた」のではなく、「No1にふさわしくないと思われたからバッシングされた」と考えるべきです。
何の話かというと、今週の日経ビジネスの特集の話。
トヨタに関しての特集なんですが、あまりにも結論の歯切れが悪い。というか何が言いたいのか良くわからない。
取材された内容は、国内生産を守ろうと必死に動きつつ足元の円高で系列の取引先まではケアしきれなくなっているトヨタの苦悩と、昨年のアメリカでの安全性問題を機に、さらなる改善にひた走る足腰の強さ。
伝えられている情報は正しいと思いますが、そこから導きだされている日経ビジネスの示唆が意味不明です。
「昨年のアメリカでのバッシングはNo1を日本企業に奪われたことに対するアメリカ人の憤りが背景にあるので、No1にはならずNo2くらいで行くのがいいんじゃないか?」
と、そこまでダイレクトには書いてありませんが、そういうことだと解釈されても仕方の無いような記事のまとめ方をしています。
この認識は間違っている。あまりにも短絡的過ぎ。
No1になった企業がバッシングされるのは、その企業がNo1にふさわしくない、と思われている時です。王者にふさわしい態度を取る企業はバッシングの対象にはなりません。むしろ、尊敬を集めます。ネットの世界は浮き沈みが激しいので、ちょっと旗色が悪くなってきましたが、Google、Apple、など王者でありつつ革新者の態度を持ち続ける、とか、P&GやGEのように卓越したマネジメント体制を作り上げる、とか。
No1になった企業が王者の戦略(=弱いものいじめ)を取らず、社会を良い方向に変えようというコミットメントを見せる限りはバッシングは起こりません。
トヨタに足りなかったのはこれではないでしょうか?
自動車は環境負荷が非常に大きい20世紀の産物で、これをどうするかは次世代に大きな影響を与えます。トヨタはハイブリッドで先行しましたが、EV、スマートグリッドを中心に、車は今「エネルギー体制」の枠組みの中で大きく変わることが期待されており、それは人類の将来にとってとても大切な問題です。
もし、トヨタが、将来の車・エネルギー像を極めて明確に、野心的に示して社会を変えようとする企業であったら、アメリカ人は絶対にこの会社をバッシングすることはしなかったでしょう。むしろ、賞賛し、共感し、奨励したはず。
トヨタはカイゼンをはじめ生産と品質に対する徹底したこだわりを哲学とする企業ですが、もう一歩踏み込んだ社会的なインパクトに関する態度が曖昧です。そして、それは自動車業界の王者が是非持っているべきことです。
トヨタに対して外部の我々が期待することはそういうことであって、決して「No2くらいでやっていくのがいいんじゃないですか?」ということではないはずです。
日経ビジネス、ピントが外れているんではないかと思います。