[]その論点設定はちょっと古いんじゃないか? 日経ビジネス「アップルの真実」

hyoshi




ジョブスってイエス・キリストに見えますよね。死と向き合ったリーダーだからそう見えるのか、それともやっぱり稀代の創業者だからそう見えるのか。 とにかく、復帰からこれまでのジョブスは、神業にしか見えないビジネス構築を行ってきました。



で、ここにきて今回の日経ビジネスの特集



正直、ちょっとこの論点設定はすでに旬を過ぎているように思います。Androidのシェアが急増している事実を見て「アップル勢いが鈍ってきたな」というのであれば、誰にでも言える話と思います。今、考えないとならない論点はもはやここには無いし、第一「アップルの勢いはこのまま続くのだろうか?」を考えたところで、何か生産的なアイデアが生まれてくるとは思えません。



そういう意味で、日経ビジネスはいつもながらポイントが外れています。 幅広い読者層を持つメディアとして、もうちょっと知性的な啓蒙力を期待したいですね。この雑誌に切れのある分析を求めている人はもう居ないのかもしれませんが。。。



考えなければならない論点は「アップルの勢いがこのまま続くかどうか?」ではなくて、「アップルの次の一手にはどういう選択肢があるか?」です。この会社はソフトとハードのビジネスモデルを上手く使い分けているので、次の一手で何をするかによって、もしかしたら既存のビジネス構造が大きく変わってしまうかもしれない。



であるとしたら、その環境を予見して自分たちは何をするべきなのか。それを考えることには価値があります。



アップルの次の一手で怖いなあと思うのは、コンテンツ事業の収益をゼロにする可能性。アップル自身の収益の源泉はハードウェアの売上にあって、売り上げベースだとサービスは10%以下。ということは、利益ベースだとおそらく20%弱くらいなんだろうと思います。



Android端末がシェアを伸ばすのはある程度仕方がありません。スマートフォンの機能のうち、電話・メール・Web・カメラ、、、みたいな機能はiPhoneで無くても供給できるものなので、そこはコモディティ化しやすい。色々なメーカーがどんどん機能をブラッシュアップしてくるので、その機能で満足な人はiPhoneでなければならない理由はありません。追加の機能も増えるのでしょうから、この先iPhoneはどんどんシェアを落とすでしょう。



そうなったときに、アップルが次の一手として打つ施策の選択肢は、ポーターっぽく考えれば、「アップルならでは」の差別化の方向に向かうか、得意の量産コスト削減で価格を落とす方に向かうか、に分かれます。



その中でアップルが採用したら怖いな、と思うのがコンテンツ事業の収益を捨ててハードの収益を守る戦略。iTunesを完全にオープンプラットフォームにして、今取っている30%の収益をゼロ、もしくはトービン税並みに低くする。コンテンツの売り手にとってiTunesで売ることの魅力を高めて、ソフトでユーザーを挽きつけ、ハードのシェアを守る。そうすると、きっと同じようなコンテンツプラットフォームがGoogleのような会社からも出てくることになって、プラットフォームビジネスはぜんぜん儲からない構造になってしまうんでしょう。



そういう環境になったとしたらどうやって利益を稼ぐのか、は考えておいたほうが良いように思いますね。