[]発想が安易ではないか? 「高齢化を味方に:日経エレクトロニクス」

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惜しいんだけど、ちょっと発想が安易なんだよなあ。。今週の日経エレクトロニクスの特集「高齢化を味方に 日本発の製品/サービスを世界へ」



どこが安易かというと、結局のところ「日本で先進的なものを作ってそれを他の国に売る」という昭和のエレクトロニクス業界の発展モデルの枠組みでしか物事を考えていないところ。



これ、団塊世代の人たちの魂に刻み付けられてしまった成功体験なので、この人達はこの思考パターンしかできなくなっているんだろうと思いますが、この考えで突っ込んでいくと失敗します。何でかというと、昔に比べて今はキャッチアップされるスピードがめちゃめちゃ速いから。優秀な人は世界中に山のように居て、情報の伝達スピードはITCのために断然速くなっています。



具体的に考えれば、日本が他国よりも先に高齢化社会を迎えていることが、この分野の製品・サービスの開発でたいしたアドバンテージにはならないことは明白です。らくらくホンや、遠隔医療サービスや、使い易い家電って、どれくらいのノウハウの先行者アドバンテージになるんでしょうか。技術的に難しいわけではなさそうだし、マーケティングのノウハウも高齢者と言っても国によって千差万別で、日本で受け入れられたマーケティングノウハウがそのまま他国で展開できるという保障はありません。

製品開発の面でキャッチアップにかかる期間は、3年も要らないのではないでしょうか?



なので、「日本で開発しておけば、世界の他社を先行することができるので、それを5年後に横展開できる」というのは、あんまり信じない方が良い考え方です。



ただ、事実として、韓国やシンガポール、中国が、10〜20年くらいのスパンで急速に高齢化していくのは人口統計から見て明らかです。それは間違いなく市場の変化となり何らかのビジネスチャンスを作り出します。



だから、今のうちから色々考えておくことは有意義なのですが、ここで考えるべきことは、「日本で先に開発して、後で他国に展開する」という考え方ではなくて、「他国にも展開できるようなものを今から作り始める」ことはできないか?ということです。もしくは、地域戦略として先んじて他国のマーケットを開拓し始めておくことはできないか?という考え方。



韓国企業は日本企業が無視した新興市場に先んじて出て行きました。その数年の差がブランドの認知度や流通への影響力、営業組織、開発体制、とあらゆる面で日本に対する参入障壁となっています。これをひっくり返すのはとても大変。マーケットが存在することに築いてから動くのでは遅いということです。



マーケットになることがわかっているのであれば、たとえそれが今は「見えない市場」であっても先んじて動く。そのほうがはるかに賢い。



日本企業は、日本市場を相手にする以上、老人市場を相手にしなくてはなりませんが、市場としては日本国外の方が間違いなく大きくなります。新興国は急速に豊かになっているので、将来出現する新興国の(その頃はもう「新興」ではなくなっているのでしょうが)老人市場は結構な規模になるんだろうと思います。



日本と時期を同じくして取り組み始め、経験曲線を少しでも先に進めておくこと。市場の中で障壁を作るにはどうすれば良いか?を考え、試行錯誤をしていくことが要諦になると思います。



で、日経エレクトロニクスの記事を見ても、こういう考え方は団塊の世代の人たちはとても苦手なので、もうちょっと若い人が先導をしてやったほうが良いと思います。