[]商品戦略だけでコマツの事例を語るのは片手落ちではないか? (日経ビジネス特集「稼げるモノ作り」)

hyoshi




コマツの利益率はなぜ12%もあるのか」と副題にまで取り上げるのであれば、もうちょっと多面的に分析をするべきではないかと思います。 今週の日経ビジネスの特集。



どうして毎度毎度、こう浅い特集を組んでしまうのか、この雑誌は。



コマツの話としてあげられているのは、

  ・「基幹部品で競争力が強い」

  ・「その技術は日本での系列メーカーとの摺り合わせが不可欠でまねできない」

  ・「GPSを使ったKOMTRAXが集金や備品販売に役立っている」



ということですが、これらの話を聞いて「なるほど、だから利益率が12%もあるのか!!」と納得するもんでしょうか? しませんよね。商品の話をしすぎていて、ビジネス構造での強みが見えません。



「なぜ高い利益率を誇っているのか」という問いに対しては

  ・商品を高い値段で売れるから

  ・コストを安く抑えているから

  ・商品以外に収益性の高い付帯ビジネスがあるから



という3つの方面での答えがあるはずで、しかもそれは競合(ここではキャタピラー)との競争戦略の文脈で分析がされる必要があります。



日経ビジネスが今回挙げている話は、いつもの商品至上主義のファンタジーで、「技術を磨いて、うまい商品を作れば儲かるはず」と言っているに過ぎません。一面の真実ではあるものの、ビジネス全体の中ではそれは一部に過ぎず片手落ちです。



コマツの事例は、もっと他の事実と同時に語られるべきものです。少なくとも、下の視点はコマツを語る上でははずせません。



・2000年前半に収益が悪化した際に大変なリストラとコスト削減をして一旦「かがんだ」ことがその後の収益力に大きく影響していること

・日本メーカーの中ではいち早く、日本市場の縮小に見舞われ、新興国フォーカスに舵を切ったこと。

・総合力で勝負してくるキャタピラーを前に、飛び道具的な戦い方を余儀なくされ、それが却って新興国攻略に役立ったこと



つまり、競争戦略/成長戦略の中での、ある瞬間での経営判断が今のコマツのポジションを作っています。

どうしてコマツはできて、他のメーカーはできなかったのか? それは組織風土の問題なのか、システムの問題なのか。それともたまたまなのか?ということを論点に分析を進めたら、よほど有用な特集になったのだと思うのです。



いつものことですが、ちょっと残念な内容でした。