[]強いモノづくり組織はテキサスバーガーのような構造になるのでは? (日経ビジネス特集「いまどきのヒット商品、鉱脈は足元に」)

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一般ビジネス誌のほうは、先週はどこもかしこも2010年を振り返る特集でしたが、日経エレクトロニクスのほうはちょっと控えめに今年流行ったものの特徴を振り返り特集でした。



書いてあることは正しいと思いますが、流行ったもの一つ一つをもっと丁寧に帰納的に分類しなおした方が良いように思いますね。一旦単純化すると考える余力が出てきて、次に何を考えないとならないかが明白になるので。



単純に言ってしまうと、電気製品に関しては、ここ数年2つの流れがあって、それは今年もあまり大きくは変わりませんでした。いわゆる「白モノ」と「黒モノ」の話で、白物は現地でのモノづくり重視戦略に分が有ることが明白になりつつあり、黒モノの方は引き続き生産投資の経済性が勝つための最大のドライバーになっています。



この流れ、思うにどこかで合流すると思うんですね。そういう未来を見据えて、グローバルのモノづくり組織体制をどうするかを考えて今すぐ実行に移したほうが良い様に思います。



今は、インドやらヨーロッパやら、現地にR&Dセンターを作るのは主に白モノ家電の開発目的が多いのですが、これって別に白モノに限らない話ですよね。先々の市場規模を考えると、巨大市場が分散することは明白なので、各巨大市場(北米・中国・その他東アジア・東南アジア・南アジア・中南米・中東・西ヨーロッパ・CIS圏・その他)それぞれに適した商品を高速で投入できる企業に勝機がでてきます。



昔は日本で売れるものは世界で売れる、とか北米を制すれば世界を制する、という時代でしたが、リーマンショック以降は違う世界に入ってしまい、その流れは2009年〜2010年の中国の台頭で決定的になってしまいました。今までの考え方は一旦リセットしたほうがいいですね。



簡単に言ってしまうと、モノづくりは分散せざるを得ません。00年代前半まではグローバル化というのはアメリカ化と同じことだったのですが、今この瞬間のグローバル化は世界の多極化のことを意味していて、ビジネスとしてはそれはそれぞれの極にあった商品・サービスを作ることです。



モノづくりの拠点はきっと世界各地にバラバラに散らばって行くところに勝機があるのでしょう。大きなイノベーションで新しい商品を作る流れと、汎用的な技術をローカルのニーズにチューンアップする流れが二つ併走することになるのだと思います。



この時の勝てる組織の形というのは「テキサス・バーガー」のような形をしているんだろうなあ、というのが僕が今思うことです。



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単純に言うと、強いモノづくり組織は



  「熱い中身が色々と種類があって、それをドライなものが挟み込んでいる」



という形をしているんだろうと思うのです。



テキサスバーガーで言えば、ビーフパテやベーコンの熱いものを、乾いたパンが挟んでいる構造。



この時、中身の熱いものは、モノづくりの中核組織のことで、開発とか企画のことをさします。昔はハンバーガーみたいな「ビーフパテ一個で勝負」で良かったんでしょうが、今の時代はそれは各市場にそれぞれ対応する「ビーフパテ」が必要です。少なくとも米州、東アジア(中国/日本/韓国/台湾)・南/東南アジア(インド/東南アジア)、ヨーロッパ(西/東/CIS圏)の3つは、独自の商品を投入する必要があり、ビーフパテ、ベーコン、その他野菜などのバリエーションが必要です。



ただ、そうすると開発が分断され、投資効率が悪くなるので、上からそれぞれの活動を押さえつけるドライな存在が必要になります。テキサスバーガーで言えば、それが上側のパンになり、実際の組織では投資機能を持った組織ということになります。



ある開発が儲かっているのかどうか、次の金はどこに投資をするべきなのか。中身を知りつつもドライな目で投資判断をする組織が全体を統括する必要があります。



さらに、企画・開発は往々にして独善的になりがちなので、それを下から抑えるドライな存在も必要です。それが下のパンなのですが、組織の中でそれを果たすのはセールス/マーケティングの機能になります。顧客のフィードバックをドライに伝え、何が売れて何が売れなさそうなのか、を正しく把握し、売れるものを選別していく機能が下から組織全体を支えます。



地域にあった商品・サービスの開発部隊を、投資機能を持った本社(本部)と市場とのつながりを強固にしたセールス・マーケティング組織を挟む。そのバランスが優れた組織に勝機がでてくるのではないかな、そんなことを考えました。