[]家電ニッポン最後の戦い(日経ビジネス9月26日号特集)

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メーカーの人と話していると、「この円高では勝負にならない」という発言をよく聞きます。確かに、数年前と比べると為替は大きく円高方向に振れているので、日本で生産して輸出する場合は相当不利な状況なのは間違いありません。



だけど、これってそもそも、日本での生産を前提にするからそういう話になるわけであって、その前提を外せば為替は勝負に負けている言い訳にはなりません。



世界は多極化の方向に向かっているのだから、それぞれの市場にあったものをそれぞれの市場で開発し生産する方が多くの場合合理的です。特に、新興国は国内産業保護のため、結構色々な物品に高関税をかけていていいます。労務費、電力代、市場の理解、と総合的に考えても、正直、そういう国のローカルプレーヤーと日本からの輸出モデルで戦うのは無理があります。



日本のメーカーがどうやって生き残って行くべきなのか。



やっぱり最初のヒントは80年代に日本メーカーの猛追を受けて、それでも生き残った欧米メーカーにあるように思います。「欧米キャッチアップ」は戦後日本のお家芸なので、これが一番判りやすい。ポイントはやっぱり投資の選択と集中、それからスピード。



将来の大きな流れを読むこと。その中で自社の勝ちのストーリーを明確に作ること。そして、絶対に負けないコアを見極めて集中投資すること。外の技術や知識を取り込んだり、自社の知見を外に売る、出入りの柔軟性を持つこと。



それから、とても大切なことに、そういう次世代のメーカーの姿を実現できる人材を採用し育成すること。



たぶん、次世代のメーカーには、なんていうか、もっと商社的な人材が必要なんだと思います。自社のコアを組み込みつつ、バリューチェーンを組み立てて、それをビジネスに変えることができる人。どういう投資をして、どうやって回収を行うのかを考えることができる人。顧客の中に突っ込んで行って、柔軟に提案を変えながら確実に長期的に収益を上げていくことができる人。



日経ビジネスは「家電ニッポン最後の戦い」と言っていますが、確かに今がプリズムの入射ポイント。ここで自社が進む方向性の判断を間違った会社は、10年以内に淘汰されるのは間違いないと思います。