[]組織論であり、人材育成論であり、仕事論であり、人生論(斉須正雄「調理場という戦場」)

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三田のフレンチ「コート・ドール」の斉須さんの本。



「コート・ドール」はだいぶ昔に一回だけ行った事があります。ハーフボトルでワインを飲んで、それがとても美味しかったのを覚えています。



本の内容は斉須さんの料理人としての経歴を若い時から時系列でつづったものですが、そこから読み取れることは組織論であり、人材育成論であり、仕事論であり、人生論です。 非常に多様な示唆がちりばめられています。しかも、それらが斉須さんの生きた経験と共に書かれているので、説得力があります。



個人的には、三店目の「ヴィヴァロア」と四店目の「タイユバン」の比較が面白かった。両方とも3つ星のお店ですが、お店の経営スタイルがまったく違います。オーナーの個性から来るのですが、「ヴィヴァロア」が自由と規律をバランスさせるスタイルだとすると、「タイユバン」は究極まで規律を強めるスタイル。



一見すると、ヴィヴァロアの方が楽しくて良いようにも思えるけど、このお店は短いサイクルで料理人を入れ替えて新陳代謝を活発に行うお店でもある。



大きな組織(タイユバン)と小さな組織(ヴィヴァロア)。強い組織を継続させる方法はそれぞれ異なります。タイユバンは規律でオーナーと従業員・従業員同士の馴れ合い化を防ぐことでサービスクオリティを維持しようとする。ヴィヴァロアは、自由と規律をバランスさせて魅力的な職場を作ることで、市場から最も旬な人材を取り込み、さらにそれを短いサイクルで交代させていくことでサービスクオリティを維持している。



レストランという世界を通して、様々な示唆を見せてくれる。そんな稀有な本がこの「調理場という戦場」という300ページ足らずの本なのだと思います。



とてもお勧め