[]単なるインデックスファンド推奨本では無い(「ウォール街のランダム・ウォーカー」)

book_111062016




非常に有名なベストセラーで、ちょっと分厚いんですが、とても良い本。



一見、市場は効率的でインデックスファンドを上回る運用成績を出すことはほとんど不可能、という主張をしているように見えますが(そして、実際そう書いていますが)、行間から漂ってくるのは、そういう単純な話ではありません。



たぶん、言いたいことはこういうこと。



・市場は効率的である

・よって、短期の売買で市場を出し抜くことは出来ない

・一方、長期の株価は企業のファンダメンタルな価値に収斂していく

・よって、着実にEPSを増加させているにも関わらず、割安に放置されている会社への長期投資は有効

  −特に、投資家が「砂上の楼閣」を作りやすい会社

・さらに、分散投資を行うことで、個別企業の「非システマチックリスク」を低減させられる

・ベータをみることは今でも有効

  −ベータと利益には何の相関も無いが、市場のシステマチックリスクを低減させる投資先になりえる

・ちなみに、以上のようなことを個人が考えるのは面倒なので、結局インデックスファンドを買うのが良い



株価はランダム・ウォークなんですが、それは特に短期の値動きのことを念頭に置いていて、長期的には企業の価値の増加に従って株価は上がっていく、ということが重要です。



そして、ここから出てくる非常に重要な示唆は、日本の株式はインデックスファンドを買っても儲からないということ。(これは訳者があとがきで書いています) 企業の価値が継続的に増加している(そういう努力をしている)、欧米+今のところの新興国、ではインデックスファンドを買うのが良いですが、日本は事情が異なります。



というのも、東証に上場している企業の大半はそもそも利益を創出する力がグローバルプレーヤーに比べて劣るので、株価が伸びない。仮に東証のインデックスファンドを長期保有していたとしても、大半の場合元本割れしてしまいます。



これは日本企業の構造的な問題なので、この先も日本株のインデックスファンドは買うべきでは無いと思います。



日本株の場合は、逆に、個別企業の中で先々の利益創出に期待が持てるところがあって、そういうところの株価が意外な安値で放置されています。グローバルの投資家から見て、まだちょっと企業の実態が見にくいんでしょうかね。



なので、日本株投資の場合はインデックスファンドではなくて、個別のバリュー株を数十社くらい見繕って、そこに投資をする、というスタイルの方が良いように思います。



海外のインデックスファンド+日本の個別株、というポートフォリオの組み方が良い、というのがこの本を読んだ後の結論ですね。