【2005年ベスト本!】サンタクロースの秘密
2005年に読んだ本の中、栄えあるベスト1位はやはりこの本です。
「サンタクロースの秘密」
「火あぶりにされたサンタクロース」というレヴィ=ストロースの論文と、「幸福の贈与」という中沢新一の解説の2本立ての本で110ページくらいの本なので手軽に読めます。
手軽に読めるんだけど、内容は極めて深い。
「1951年にフランスのディジョン大聖堂前で、サンタクロースが火刑に処される」というショッキングなニュースの解説から始まり、クリスマスが、
”子供対大人という構図を超えて、死者と生者という、より根源的な対立の構造”
を基本構造として持っているということを証明して行きます。
この論文はレヴィ=ストロースが構造主義の考えを結晶される前に、「レタン・モデンヌ」というサルトルの雑誌に寄稿したものだそうですが、後々の実存主義との関係を考えると、とても面白いですね。
最終的な結論として、「贈り物をする」という贈与の行為の持つ意味に言及して論文を締めくくっており、親族の基本構造で明らかにした結論と同様の考えを見て取ることができます。
中沢新一の解説は、この論文を受け、もう少し大きな枠組みでクリスマスの構造とレヴィ=ストロースの思想を解説しています。こちらも非常に分かりやすくて面白い。
”なぜ人々は、こういう時代になってもまだ、クリスマスの到来に、胸をときめかせたりするのだろうか。それは、人間の感じる幸福というものの発生の秘密に関わっている”
と、誰もが不思議に思うナイーブな疑問からはじめ、歴史的にはマーシャルプラン以降、バタイユが「普遍経済」(呪われた部分)へと向かい、レヴィ=ストロースが構造主義(親族の基本構造)へと向かう、その共通として”深い内面的なつながりがある”ことを概観します。
ブルジョア社会により、「死者(子供)⇔生者(大人)」の外部性が喪失したあともなお、サンタ・クロースという死者の世界(および神)の特徴を持った存在を媒介として、「贈与の霊」の動きを発生される構造こそクリスマスである、と指摘して行きます。
レヴィ=ストロースの論文から、より明確にサンタクロースの基本構造を抉り出しているため、前半のレヴィ=ストロースの論文と後半の中沢新一の解説を、両方合わせて一気に読むと極めて知的な興奮を味わうことが出来ます。
すごい本です。オススメ。