シンプルマーケティング (2006)

シンプルマーケティング

旧版をかなり前に読んだのですが、最近新版が別の出版社から出たということで、新しく買って読みました。



根本的な考え方は旧版と変わりませんが、いくつか新規の分析手法が入っていたり、ケースとして取り上げられている例が新しくなっています。



マーケティングの実務をしている人にとっては非常に参考になる本です。現状分析と施策の立案のプロセスで、そのまま生かせる思考のフレームワークが沢山載っています。新規の分析や企画を立てる際に、僕もよく参照しています。本棚から取り出して、パラパラと確認し、森さん(著者の人ね)だったらどうやって分析するかな、と考えたりしています。



僕の本棚の中でも比較的参照回数が多い本だと思います。





マーケティングの4Pの中でも、特にProductとPromotionに関する思考のフレームワークが多いので、Place、それから特にPriceに関しては、別途自分なりのフレームワークを確立させて持っておくことが必要です。(Pricingに関しては、個人的には「価格戦略論」をよく参照します)





マーケティングの分析は、複数のフレームワークの組み合わせで行うわけですが、この本に出てくるフレームワークの組み合わせ(=コンボ)を作るとこんな感じでしょうか?





1.マーケット規模の推定



これは「デジタルカメラ」や「携帯電話」など、カテゴリーごとに作ると同時に、ニーズベースでも把握をしておくことが必要です。(写真を撮る、というニーズに対してはデジタルカメラと携帯電話は競合する) ユーザー数にして100万人以上が存在すれば、1つのマーケットとして考えることが出来ます。



2.プロダクト・ライフサイクル上の位置を推定する



普及率で考えれば70%程度。マーケットの現象としては?差別化商品が乱発する、?価格競争が始まる、?新規参入と淘汰が始まる、のが見え始めたら成長期の終わりと考える。 で、ここから先はマーケティング戦略を考える前に、事業戦略を考える領域になるので、PPMみたな「やるのか・やめるのか」という判断をする必要があります。マーケティング的には、ターゲットがイノベーターなのかフォロアーなのかが異なってくるので、「エッセンス訴求をする」のか「規格訴求をする」のか、プロモーションの根本的な方針が変わります。



3.ニーズとウォンツの歴史的な変遷をグラフ化する



消費者が何を求めているのか、は往々にして見えにくくなりますが、ニーズとウォンツに綺麗に分類して、その歴史的変遷と「満たされ度」を把握しておく。



4.ターゲットシェアを決める



クープマンのシェア目標値から、次に狙うべきターゲットシェアを決める。そこから、ランチェスターの射程距離の概念(シェア値の差がルート3以内)から、シェアを奪い取る相手を特定する。(上位に挑むのか、弱いものいじめをするのか)同時に、自分のシェアポジションから、自動的に「対消費者、対コンペティター」の戦略オプションが決まります。)「対消費者」としては、「スキミング or ペネトレーション」、「対コンペティター」としては「正面攻撃 or 側面攻撃 or ミート戦略」のどれかのオプションを選択することになります。



5.自社分析



規格→ベネフィット→エッセンスの定義と、ブランドの連想記憶分析、DCCM分析を行って商品評価を行います。同時に、知名度(60%以上あるか?)、コンバージョンレート・リテンションレートの分析、を行って課題を発見します。







まあ、こんな感じで分析をして、戦略を決めていくという流れになるのだろうと思います。



良書なので、一読をお勧めします。