[]コンサルティングとコーチングが繋がる感覚(オットー・シャーマー「U理論」)

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この本を読み終わって、三枝匡さんの一連の経営小説のことが思い浮かびました。



どの本だったか忘れましたが(「経営パワーの危機」だったか「V字回復の経営」だったか。。。)、会社が傾く状況でコアメンバーが集中合宿を行い、そこから本質的な認識の変化を得るシーンがあります。



三枝さんはコンサルタントの立場で小説を書いているし、登場するのは経営コンサルタントなのですが、コアメンバーが集まる「場」で起こっていたことが、U理論で語られていることと非常に近いように感じました。



U理論自体は、僕の印象ではコーアクティブ・コーチングと非常に近いですね。組織まで領域を広げたコーアクティブ・コーチングという感じでしょうか。源(ソース)に触れる、という下り、ここ最近(研修と個人のコーチングセッション)での体験を思い出しました。



古い考えから抜け出し、本質的な認識の変化が起こることは、個人にとって大変なインパクトをもたらします。これが組織単位で起こるのだとしたら、それはたとえ数人のグループであったとしても、会社や社会を揺るがす大きな力になるのだと思います。



コンサルティングコーチングのボーダーラインが段々と無くなっていくことを感じます。



この仕事は極めて重要。

[]書名の通りの本(ジョセフ・オコナー他「コーチングのすべて」)

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コーチングって、日本ではまだマイナーな領域ですね。



「怪しい自己啓発でしょ?」というのが大多数の人の感覚だと思います。

(実際、そう言われる)



でもまあ、この反応は当然と言えば当然。人は良く知らないものは信頼しませんね。



この分野、もともとの発祥が米・英で、特にアメリカではこの30年くらいの間で方法論としても哲学としても深化を続けています。日本における状況とはだいぶ違う。特に、日本でのコーチングへの認識と違うのが、



1.コーチングのルーツや歴史がきちんと自省されている

 −コーチングはどこから来て、どこへ向かうのか

2.他の十分に確立した学問や専門領域との繋がりが模索されている



ということ。これによって、コーチングとは一体なんであるのか?という基本的な問いに答えることが出来るようになっています。なので、信頼しやすい。



この本は、この「コーチングとは一体何であるのか?」という問いを、歴史、方法論の幅的、隣接領域との関係、社会的意義、といった観点で考察したものです。



厚みのある情報で、相当しっかりとした本。コーチングを勉強している人にとっては優れた参考書だと思います。


[]リーダーシップは学ぶことが出来ない(安田雪「ルフィと白ひげ 信頼される人の条件」)

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リーダーシップを身に着けることは「手段」ではなくて「目的」なんだと思います。

これを取り違えている内は、どうがんばってもリーダーにはなれない。



・リーダーシップを身につけて組織運営を上手くやりたい

・リーダーシップを身につけて人との関係を良くしたい



こう考える気持ちは良くわかりますが、リーダーシップを手段として人との関係において何かを達成しようとしても、何も達成できないと思います。なぜなら、人は意図を持って近づいてくる人が大嫌いだからです。特に、損得の意識を持って近づいてこられると嫌悪感すら感じます。



この本を読んで、何かしらのコツとかテクニックを身に着けようと思っても得るものは少ないと思います。この本が「これからの社会のリーダー像」とするのは漫画"One Piece"のルフィであり、彼のリーダーシップは彼の生き方・人への接し方そのものです。それを切り売りのティップスのように他人が学ぶことは出来ません。



ただし、"One Piece"の描くリーダーシップに共感し、自分もそうありたいと思うことは、本人に何かしらの変化を与えると思います。もしかしたら、リーダーとして覚醒するかもしれない。その素材として、One Pieceの登場人物は、リアリティを持ったリーダー像を体現しています。



このとき、リーダーシップを身に着けることは自己目的化しています。手段ではない。結局、リーダーシップを「手段」でなく「目的」と考える人は、意識が自分の中に向かうんだろうと思います。自分はどうありたいのか。何を求めるのか。何を感じるのか。



リーダーシップは、人が複数居て初めて成立するものだが、その本質は極めて個人的なものなのではないか?



そんなことを考えさせてくれる本でした。 面白いです。






[]2035年の自分の立ち居地を考える(三浦展「日本人はこれから何を買うのか?」)

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最近、リノベーションをしたくてたまらないんです。しばらく家を買うつもりは無いので、できれば賃貸で。



センスの良い設計士の人と相談しながら、壁材、床材から間取りまで全部決めて、しっくり来る住空間を作りたい。生活空間を自分で作ることは、「どういう毎日を送りたいか?」に自覚的であるということで、それは人として生きる力を呼び覚ますような感じがします。



同様に、どういう「社会」生活空間を作るかを考えることは、これまた人間らしい尊厳とか感覚を強く呼び覚ますように思います。



「おひとりさま」がマジョリティを占める社会が到来するのがわかっているのであれば、それを前提としてどういう社会をデザインしていくのか。その中で自分はどういうポジションを占めるのか。そんなことをよくよく考えておいた方が良いと思います。



この本読んでて、つくづく思ったこと。シニアと若い人って、一緒に生活すると補完関係になると思うんですよね。



「お金」、「時間」、「体力」という持ち物の補完関係もあるし、「嬉しいと思うポイント」の補完関係もある。だから、シニアと若い人が気持ちよく一緒に住めるコミュニティが形成されていけば、「おひとりさま」主体の高齢化社会は、割と幸せな形に進化していくような気もします。



三浦さんは、結構ポジティブなトーンで2035年の社会像を描いています。悲観的なシナリオなんていくらでも書けるから、、、、、とご本人は書いていますが、僕はわりと本気で良い世の中がこの先到来するような感じがしています。


[]短絡思考に冷や水をかける本(「ヤバい経営学」)

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これは面白い本



経営に正解は一つでは無いということを、様々な観点で繰り返し繰り返し語りかけてくる本です。



常識を覆すような話も散りばめられていて、内容も面白いのですが、この本を読んで学ぶべきは内容ではなくて著者の経営に対するスタンスだと思います。



著者はたぶん、世の中に出回っている軽薄な議論が本当に嫌いなんだと思います。



「こうすればこうなる」

「これが成功の鍵だ」



端的に明確な解を出してほしいと思うのは悪いことではありませんが、様々な角度からのチャレンジを乗り越えていない議論には絶えず軽薄さが付きまといます。



「それは確認された事実なのか?」

「何か隠れた前提があるんではないか?」

「原因と結果を取り違えていないか?」

「時間軸をずらしても同じことが言えるのか?」

「実証された話なのか?」

などなど



世の中に対しても、自分の思考に対しても、絶えずこうしたチャレンジをし続けることが知性なのだ、ということを経営を題材に教えてくれる本です。



良書